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2003年03月14日(金) |
ホワイトデー。(SS付き) |
なので、SS載せてみる。 大したもんじゃありませんけど。 2回くらいに分けてです。予定より長くなってしまった・・・。
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SS:嫉妬
まるで街全体がお祭りのようだった。
だが、赤屍にはそんなことは関係ない。相変わらずマイペースに新宿の街を歩いていた。 気にかけていては、何人殺してもきりがない。 人を切り刻むあの瞬間は大好きだ。今この場に居る人間を切り刻むことは赤子の首をひねるよりも簡単に、人形遊びのように出来るだろう。だが、そんな人形遊びもただつまらないだけ。何の刺激も与えず、ゴミと化す骸を増やす気にもなれなかった。 だが、街が浮き立つのもしょうがないことなのかもしれない。 今日はホワイトデーなのだから。
* * *
赤屍は他に目もくれず、真っ直ぐと裏新宿にあるHONKY TONKを目指した。 ホワイトデーなのは赤屍も同じ。バレンタインのお返しはきっちりつけておかねばなるまい。 ・・・ということを口実に銀次を連れ出すつもりだった。 時の頃は夕方だった。 冷やりとした風に黒のコートがなびく。 ふわりと浮くそれはゆっくりと落ち、足にまとわりつく。それを蹴るように赤屍はどんどん歩いていった。 そして、見慣れた店のそのドアを開く。 「あ、赤屍さんだ!」 銀次の声が赤屍を迎えた。ドアを開けて一番に彼の声が聞けたのはなんとも幸運だ。 横に座っている蛮や元四天王たちは相変わらずいい顔をしていない。 銀次は席から飛ぶように降りると、一目散に赤屍の元へとかけていった。 歳のわりに子供っぽいその行動に、赤屍は温かさを覚えた。 「お久しぶりですね、銀次クン。」 「ほんとだね、なんだか最近赤屍さんに会えないんだもん。」 拗ねたように言う銀次がまた愛らしくて、赤屍は自然と笑みを浮かべた。 その度にギャラリーは怪訝そうな顔をする。 一勝負できるか、などと赤屍は脳の片隅で考える。だが、ここで闘ったら銀次に起こられるだろう。 だからその手からメスを出すのをやめた。 銀次の表情が曇るのを見るのはなぜか不快だった。 「それはそうと、これから出かけませんか?」 赤屍はいつものように笑い、持ちかける。 今更どうのこうのと回りくどい説明は要らない。何度か一緒に出かけているのだから、そのあたりは先方で勝手に分かってくれる。 「俺は別にいいけど・・・。」 来客があるせいか、銀次はそれを躊躇う。 「バレンタインのときのお返しがしたので、一緒に食事でもと思いまして。」 「ほんと!?」 どう考えても、「食事」の二文字に反応している。それでも、利用できるものは全て利用するが赤屍の信条なので、気にしない。 だが、別な意味で反応するグループがあった。 「銀次さん!?もしかして・・・ジャッカルにチョ・・・チョコを・・・。」 花月の声が戦慄いている。 それを全く察することなく銀次はうなずく。 「そうだけど、どうかしたの?」 その答えに花月は今にも倒れてしまいそうだった。 ふらふらと膝がいうことを利かなくなってしまったらしく、そばにあった座席に手をつく。 一緒に居た十兵衛は冷や冷やしながらふらつく花月を見守っている。 「おい、ジャッカル。てめぇ、礼ならその日のうちにしてたじゃねぇか。」 だからやめろ、と蛮は隠すことなく言い放つ。 「あれは『お礼』でして、今日は『お返し』です。」 「けっ、どっちもかわらねぇだろ。」 苛立ちながら蛮はそう言い捨てた。 場の空気は相変わらず悪くなる一方である。それはいつものことなので、波児は今更店が壊れない限り気になどしないが、銀次は一人そっちこっちと伺っていた。 「銀次・・・行くのか?その・・・赤屍の野郎と。」 士度が控えめに、だが率直に訊ねる。 すると銀次は困った顔をしながらも一言「うん」と言った。 「俺は・・・その、ご馳走食べたいし、行きたいんだけど。いいよね?蛮ちゃん。」 結果が分かっているにもかかわらずあえて聞くところが銀次である。うつむきながらもやや上目遣いに蛮を見やる。 「ダメだ」 と、蛮は当然答える。 「そうですよ。その男と出かけたら銀次さんの命の保障が・・・。」 「まだ銀次クンを殺すつもりはありませんよ。」 クスッと笑って赤屍が言った。 お預けをいわれた仔犬のように銀次は目で訴える。 それを見ても蛮は頑として許しを出さなかった。 状況は一向に進まない。そうそう気の長い方でない赤屍はそろそろ痺れを切らしていた。 溜め息を一つ、そして銀次の腕をとると店のドアを開けた。 「それでは銀次クンはいただいていきますよ。」 「おい!こら待て、クソ屍!!」 平然としてそれをする赤屍に向かって怒鳴るが、すでに聞く気などどこにもない。とりあえず、銀次を得ることが出来たのだからもう用はない。 赤屍は銀次を引きずるようにして店から姿を消した。
* * *
半分無理やりに連れて来たそこは都内某所の有名ホテルの展望レストラン。赤屍のお気に入りの一つだった。 外の光景など見ずに、はしゃぐ銀次をただじっと眺めながら料理が運ばれるのを待っていた。 銀次と居ると、なぜか自然と穏やかな空気が赤屍の周りに流れる。本人も無意識である。 そもそも、この男を表現する言葉に「穏やか」などという言葉はどこにも入らないだろう。 こんな彼を見れるのは世界中を探しても、間違いなく銀次くらいだ。 そして、彼の周りにこんな空気を作り出せるのも、また彼一人。 はしゃぐ銀次はこの場所がどういう場所なのか全くお構いなしのようだった。店内にかかるクラシックも銀次には何の力もない。誘い出した頃の、場の雰囲気に飲まれて緊張していた彼が少々懐かしいくらいだ。 だが、決して今の彼が嫌なわけではない。むしろ嬉しい。 「楽しそうですね。」 そう言うと。 「はい。」 と、笑顔で答えてくれる。 連中の厭味を無視してでも(いつもだが)連れ出した甲斐はあったらしい。お釣りまでつきそうなくらいだ。 目をふと細め、赤屍も外へと視線をやる。 眺める光景が青紫の生まれたての夜だった。
次第に料理がテーブルを埋めると、銀次は息をつくのも惜しむかのように口に詰め込みだした。 こんなに幸せそうに食べてもらえるなど、料理した方も気持ちが良いだろう。 最初の三十分は一言だって話さずにもくもくと食べていた銀次もある程度皿を片付けると次の料理が運ばれるまでの数分を会話に使うようになった。 「・・・・・・それでですね、その時にその猫が・・・・・・。」 会話の内容は至って普通だった。 話すのは決まって銀次で、赤屍はひたすら聞き役に徹する。日常会話の仕方を知らない赤屍にとって、それは至極当然のことだった。 そして、話すことの尽きない銀次にとっても当たり前のことらしい。 だが、銀次の世界は広いようで実は狭い。 「この間、蛮ちゃんったらまた車がレッカーされて、あの時はほんとに飢え死にするかと思いました。」 「ほんとに蛮ちゃんったらお金を使い込んで・・・・・・。」 「・・・・・・その時に蛮ちゃんが助けてくれて、その場は切り抜けて・・・。」 「蛮ちゃんが・・・・・・。」 はじめは笑顔で聞いていた赤屍もこうも蛮の話題が続くとどんどん不快指数が上がっていく。 感情を表に出さない性質の赤屍は何時までも笑顔のままだが。 第一、これがどういう感情なのかすら分かっていない。そもそも感情なのかということすら分かっていないのだからしょうがないのかもしれない。 目の前に銀次が居るのを忘れてふとメスを出したくなった。 だが、それに気づかずに銀次は花時を続けていた。 「・・・それで、そのとき蛮ちゃんがですね、」 楽しそうに続ける銀次の話に割り込むように赤屍は笑顔のまま口を挟んだ。 「貴方は本当に美堂君のことが好きなんですね。」 「え・・・・・・?」 赤屍の台詞に銀次は顔を赤く染めた。 それがまた気に食わない。 「気がついてましたか?さっきから美堂君のことしか話していませんよ?」 赤屍の表情からは彼の感情を汲みとることは出来ない。だが、ほのかに殺気が漂っていた。 「俺、何かまずいこと言いました・・・?」 それを察したのか、銀次はフォークを加えたまま訊ねる。赤屍の笑顔がなぜか怖い。 赤屍はひじを突き、手を組んだ格好でただ銀次だけを見る。 「いえ、何も言ってませんけど。」 赤屍はくすっと微笑する。だが、不快なのは間違いなかった。くつくつと何かが煮え返るような、そんな感覚に陥っている。 それが表情ではなく殺気で現れるあたりがなんとも不幸といったところであろうか。銀次にとっても、赤屍にとっても。 その気まずい雰囲気を壊すようにウェイターが新たな料理を運んできた。皿の上に乗せられた豪華な料理に銀次の気が向けられる。だが、すぐに赤屍が気になって振り返ると、さっきまで溢れていた殺気がぴたりとやんでいた。 「食べないんですか?」 そう促され、殺気が消えたことにも安心したのか、銀次はまた料理にかぶりついた。 結局、今日はそれで事なきを得た。だが、赤屍は腑に落ちない事だらけで、折角の機会が台無しになったような気がした。
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あはは、まだ終わらない。 続くのです。 バレンタインを書いたから今度も!!なんて一人で意気込んでました。 全く。。。何やってるんだろう。
おかげさまで随分カウンターが回ってます。 本当にありがとうございます。 ちょっと、328が来るのが楽しみなんですv もうすぐですけど。 3月28日にカウンターが328になれば。。。とも思ったが、多分無理でしょう。 ランちゃんの誕生日なんです。 たぶん、一人で舞い上がるでしょう。 赤屍さんのバースデーが来るのはいつかなぁ・・・v というか、こんな日記に来てくれて本当にありがとうございます。 いや、ごめんなさい。 一人で壊れてるから。 なんだか、申し訳ないです。。。 でも、多分、これからも変わらないのでご了承ください。
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