+ 空の向こう +
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今週のマガジンからの勝手な妄想です。 相当ツボだったみたいですね、自分的に。 あくまで、突発的な妄想なんでおかしなところは見逃してください(汗。
* * *
『殺さなくても、ほかに道はあるだろ!』 『あんたにはできるのか!?一人も殺さずに百人の敵を倒すことが!!』
それはわからなくない。 別に殺さなくても何とかなる。 赤屍ほどの力があれば、それは容易いことだ。 だが、目の前で無力な人間が事切れていく様子を見るのは、赤屍にとって非常に気持ち良かった。 強い敵と戦うときは、自らの力量を測るのがたまらなく楽しかった。そして、それがまた必要だった。 自分は本当に強くなったのか? なら、どのくらい?
『殺してはだめよ。』
耳の奥で囁かれる言葉。 耳障りなその言葉を振り切るように、赤屍は絶えずメスを振る。 そして逆らうようにその身に紅い液体を降らせた。
『殺してはだめ・・・。』
その声に従った結果、貴女はどうなった? 絶えず私に言い聞かせて、その結果貴女のたどった運命はどんなものだった? 問わずにはいられない。 たとえ答えが返ってなど来ない問いだろうとも。
そして、今また同じコトを赤屍に言い聞かせる。 煩わしいまでに真摯な声。
敵が現れれば赤屍は躊躇わずに切り刻んだ。 今、銀次は戦うことはできない。だからその分も赤屍が戦わなければいけないのだ。 銀次は確かに赤屍の戦いの邪魔にならぬように敵の攻撃をかわしていく。 その姿は確かに美しかった。 だが、先ほど彼が自分に向けて放った言葉が引っかっていた。 殺せばいいのに・・・・・・。 赤屍はふと思う。 逃げているだけでは、力のない彼はいずれやられてしまう。 だからこそ、こうして彼の分も自分は容赦することなく殺し続けているのだから。 だが、一通り敵をまいた後、再び銀次は赤屍に非難と怒りの目を向けてきた。 目の前の銀次を見ていると、滅多に動かないはずの感情と言うものがざわつくように蠢いた。 力を持ちながらも、殺すことをやめた少年。 自分と対照の位置にいる少年。 「殺さなければ殺されます。」 そう言い聞かせれば、 「あんたほどの力があれば殺さなくても切り抜けられるだろ!」 と食って掛かる。 過去の自分が侵した罪をさも当然とのけていく赤屍が、彼には許せないらしい。 だが、そんなことは関係ない。 「攻めは最大の防御なり、という言葉を知らないんですか?守らなければいけないからといって本当に守っているだけでは、いつか自らをも滅ぼされます。」 赤屍は嘲笑った。 「当然、自らの命を失う頃には大切なものは傍にありませんがね。」
『殺しては・・・・・・。』
そう、貴女のように、ね。
銀次は何も言えずにいた。 自分は間違っていない。そう赤屍は信じている。 銀次が人を殺してはいけないと思っているのと同じくらいか、またそれ以上に。 銀次が言い返せないのは、そう彼も思っているからだ。 赤屍はそう思う。 「でも、誰かを犠牲にして守ってもそれは本当に守ったとはいえない・・・。」 「ならば、その誰かの犠牲の変わりに貴方の大切なモノを犠牲にしますか?」 そんな馬鹿な話があってたまるか。 たかだか他人のために自分の大切なモノを売り渡すなど。 「そんな過ちは・・・私は願い下げですね。」 だから殺すのをやめることはしない。 もう、二度と。 「犠牲になんて、しません。誰も・・・。」 「そんなことは綺麗事でしかありえません。」 「それでも・・・・・・。」 赤屍の言葉を、銀次は否定し続ける。 傷つくのは、銀次自身なのに。 赤屍は溜め息をついた。 呆れてものも言えない。 「いつかわかりますよ。気付いた時にはもう遅い。」 そう言うと銀次に背を向け、先を急いだ。 しばらく銀次は立ち尽くしていたが、それでも先に進まなければいかず、小さく歩き出した。 草を踏み潰す音。 それに紛れて小さくすすり泣くような音が聞こえた。
『殺してはだめよ。』
もう二度とそんな言葉に惑わされたりしない。 再び、大切なものを失うことのないように。 後ろで静かに泣く、その小さな存在を。 ようやく出会えた、愛しい人を・・・。
貴女のように・・・。
終わり
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