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すすめられて、はじめてゴダードに会った。 ハードカヴァー2段組468ページが、飛ぶように過ぎていった。 とつぜん消えてしまった理想の女を追う旅。
アイリッシュの『幻の女』もそうだった。 せつない予感と幻に翻弄されながら、 ゴダードの仕掛ける謎の迷路にはまり込む。 罠は結び目のないシルクでできている。 謎めいたハンモックは、どんなに揺れても切れることはない。 私たちはそれを知っているから、ハンモックに 常識や理性や義務といった重荷を乗せて揺すってみる。 ふとめまいがして、目を閉じたとたん、回りの小道具が 一瞬前より、ずっとリアルな空気を呼吸していたとしても。
舞台はイギリス。 主人公は写真家の「わたし」。 彼が何度も訪れる古い石づくりの街、バース。 かつてこの保養地を2度訪れた私の見たのが陽画なら、 ここに描かれるバースは陰画、光と影の反転した街。
劇中劇の主役、過去の女性、マリアン・エスガード。 写真史に残るべき、きわめて重要な発見を したとされる科学愛好家。 絶対的な運命の結果を知らされた読者にとって、 幾重にも魅力的なマリアンの人生。 生まれる時代を間違えてしまった不幸な女。 でもほんとうにそうなのだろうか? その答えは、彼女だけが知っている。
"Caught in The Light"
一瞬の光のなかで。
まさに瞬間と瞬間のはざまに生きながら、 行間を文字がすべりゆくかのように、 ここに息づく人生もまた、 運命の本に写し取られてゆくのだろうか。(マーズ)
『一瞬の光のなかで』 著者:ロバート・ゴダード / 出版社:扶桑社
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管理者:お天気猫や
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