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36歳の女性と15歳の少年。 ふたりは恋人になった。 とても話題になった作品なので、 何かしらスキャンダラスで暗い結末への先入観は 持っていたが、それは杞憂にすぎなかった。
わたしにこの作品をすすめてくれた方の いわれるように、年齢を経て初めて同化できる テイストというものは、確かにあるように思える。
人生を問うために本を読む。 わたしはどうしてもそれをしてしまう。 それは人に対するのと同じコミュニケーションなのだ。 そこに同化して、仮の人生を生きることで 現実の世界を生きやすく形づくっていく。 ものごころついた頃からそうしてきた。 他者に共感する想像力は、そうして獲得してきたと思う。 いつも、本から人生のテイストを学ぼうとしてしまうのは 結果として読む本の範囲を狭くもしているけれど。
朗読者のスタイルには、淡々とした時間の経過と 語り手である少年の内面は描かれるけれども、 ハンナという女性の側の内面、いわゆる人生の薀蓄などは かすれた活字の間にしまわれて、 表面には浮かび上がらない。 なのに、読み進むうちに、彼らの人生の薫りが、 わたしを取り巻き、豊かさをくれるのだ。 やがて、ほんのちょっとした出来事から、 わたしも敏感に何かを察するようになる。
そして思う。 生きるということ、その単純な美しさを。
ストーリーの醍醐味が損なわれないよう、 未読の方は解説を後に回すべし。(マーズ)
『朗読者』 著者:ベルンハルト・シュリンク / 出版社:新潮クレスト・ブックス
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管理者:お天気猫や
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