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ゴッデンの代表作といわれる『ディダコイ』。 でも、ディダコイって、何?と、 読む前はちんぷんかんぷんだった。 読み始めるとすぐ説明があって、謎がとけた。 それは、純粋のジプシーでない人間を呼び分ける、 ジプシーたちの言葉だったのだ。
そのディダコイ、7歳の少女キジィが主人公。 おばあちゃんと馬のジョーと一緒に、英国はライの町の近くにある、 トゥイス提督の果樹園に暮らしている。 住んでいるのは家ではなくて、ほんものの荷馬車(ワゴン)。 そして、変化が訪れたとき、キジィもまた、変わらねばならない。
成長すること。 誰かと関係をつくってゆくこと。 誰かを許すこと。 愛すること。 全力で壁にぶっつかっては試しながら、 自分の飛べる範囲を知ってゆくこと。
キジィの物語は、シンデレラ物語ともとらえられる。 私は、読んでいて、これが不思議なほど 『赤毛のアン』を連想させるのにとまどった。
世間とはちがう価値観で生きてきた、 スポイルされてないキジィはアン・シャーリーで、 なぜかカスバート夫人(いじわるな噂好きではあるが)や 独身の養い親たちも登場する。 本筋に関係なく、アンとダイアナという 「腹心の友」ふたりの名が連ねられて出てきたり、 孤児がしてしまう失敗のエピソードも。
ゴッデンは1907年英国生まれ。 幼少時をインドで過ごし、後に英国の学校で学ぶため、 インドから強制連行(少女にとっては)される。 1908年に米国で出版されベストセラーになった 『赤毛のアン』は、どこでも読めたはずである。
なつかしいインドを五感のなかに息づかせる少女ゴッデンと、 ジプシーの暮らしから英国的な暮らしへの過渡期を過ごす 少女キジィの、共有する苦しみ。
どこまでも意地をはって、人のいうことを聞かず、 それでも誰かがそばにいて、励ましてくれるから 生きていけることを知る。
そこに孤児の身から、老兄妹の養子になったアンの世界が かいま見えて、私はほんとうに、ゴッデンと りんご畑のワゴンのそばの焚き火を囲んで、 お茶を飲みながら、積もる話がしたいと思ったのだった。 (マーズ)
『ディダコイ』 著者:ルーマー・ゴッデン / 訳:猪熊葉子 / 出版社:評論社
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管理者:お天気猫や
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