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本来、ハロウィーン用に買った本。
この憎たらしい親に、どうしてこんな善良な子が? というような疑問が湧いてくる親子がある。 たいていは一代で財を築いた『誰も信じられない』親と、 その子どもの場合だったりするんだけど。
この場合は、地獄の支配者たる悪魔がパパで、 主人公の変な子、アスモデウスはその息子。 変というのは『あくまでも』悪魔の基準に照らしてであって、 ダメ悪魔という意味。 人間の少年としては、ごく健全なこころの持ち主だ。
アスモデウス少年は、あの可憐な人魚姫のように、 明るい地上へ、人間たちのいる世界へ送られ、 悪魔らしい子になるよう、人間をそそのかし悪事を働くよう 強いられてしまう。
全編、ほとんど誤解とすれ違いと思い込み、 「こんなはずじゃなかった」の連続によって、 アスモデウスは、やさしくて、あたたかく癒される きれいなものと出会ってゆく。 シャガールの絵顔負けの事態を招いたり、 このまま時間がとまればいい、と願った至福の思い出も。
悪魔の子としての精進にはいっこうに役立たないのだが、 自分のなかにもっていた温もりと同じものを見つけ、 それが普通にある世界のことを知るのだった。
とはいえ、アスモデウスの家は地上ではない。 泣いても笑っても、パパもママも、悪魔なのだ。 そこが彼の家なのだ。 乱暴でがさつで無知で、貪欲で強引でわがままな家族に囲まれ、 「ここは僕のいるところじゃない」と違和感を 感じ続けた子どもが、初めて友だちの家に泊まり、 普通の家族団らんを知ったら、こんな感じだろうか。
いろんな読み替えのできるアスモデウスの物語は、 どこか日本の地獄絵を髣髴とさせる絵で読む物語でもある。 作家と画家はともにスウェーデン生まれ。 コンビによる作品も多いだけあって、 みごとに息の合ったコンビネーションである。 それにしても、 悪魔パパ、こわいよう。(マーズ)
『地獄の悪魔アスモデウス』 著者:ウルフ・スタルク / 絵:アンナ・ヘグルンド / 訳:菱木晃子 / 出版社:あすなろ書房
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管理者:お天気猫や
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