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韓国の詩人、アン・ドヒョンが、 故郷の川に帰る鮭の命を通じて、生きる意味を問う。
1961年生まれ、1981年にデビューした安度呟は、 1996年、詩と詩学社の「若い詩人賞」を受賞。 学生時代から詩作を続けているという。 じつは、男性なのか女性なのかわからずにいた。 作品を読んでいるときは、女性だろうか、と思ったり、 やはり男性かなあ、と思ったり。 本人のサイトで写真を見てやっと男性と確認した。
前半は北太平洋から南下する鮭の群れが、 後半は朝鮮半島を流れる川へ入り、上流をめざす。 その群れのなかの銀色の雄鮭、カムルが主人公。 カムルは、子どもを産むためだけでない人生の意味を 探し求める鮭だった。それは選択できる目標だと信じていたし、 自分にしかできない何かを、神様は与えてくれているのだと。 瞳に深いものをたたえた雌の鮭、エインと出会っても、なお。
カムルの思いにおかまいなく、 時間はどんどん、ひとつの方向へと群れをせきたてる。 どの鮭もみんな、生きる目標は何か、ということを疑わない。 パートナーを見つけて、子孫を残すこと。 私たちは、それが鮭の群れであるならば、当然のことと思う。 疑いすら抱かない。
もし、このメッセージを20代で受け取っていたら、 今とはちがった違和感を抱いたかもしれない。 たしかに、今はちがう。 それは結局、この歳にならないと、身にしみては わかりえなかったことかもしれない。 作者の年齢を思うと、カムルだった若い日の姿が浮かぶ。
扉に書かれた言葉をそのまま引用しよう。 何よりも、読者とこの本を結ぶメッセージとなるだろうから。
それでもまだ愛が── 古ぼけた外套(コート)のようによれよれになり もう捨ててしまわなくては でも捨てられない もう一度だけ、手にしたい… そんな希望がこの世界にはあふれている だから生きてゆくのだと 信じるあなたにこれを捧げる (引用/アン・ドヒョン)
草緑江(チョロッカン)、カムルたちの故郷の川が 実在であろうと象徴であろうと、その流れは すべての生命のみなもとへ、私たちの想いを運ぶ。 (マーズ)
『幸せのねむる川』 著者:アン・ドヒョン / 訳:藤田優里子 / 出版社:青春出版社
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管理者:お天気猫や
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