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しばらく手に入らなかったアンデルセンの絵本『白鳥』が、 今年になって増刷されました。
扉の裏には、アンデルセンの母国語でのタイトルが。 『DE VILDE SVANER』、日本では『野の白鳥』が一般的です。 かつては絵本や子ども向け全集で『はくちょうのおうじ』という タイトルが主流だったように思います。私が一番好きだったお話です。
マーシャ・ブラウンの描く墨のようなモノトーンと、 部分に効かせた珊瑚色の繊細な絵に、昨年、原書を見て以来、 ずっと惹かれていました。 彼女がこの絵本を描いたのは、1963年のことです。
表紙の白鳥が、洋書と邦訳では左右逆になっているので、 以前コールデコットの受賞作を展示するお手伝いをしたとき、 両方を並べて置いたのを思い出します。 これは開く方向が逆だからそうしたのでしょうが、こういう大胆な構図 でなければ、すんなりとはいかない変更ともいえます。 どちらにしても、気品のある白鳥です。なんといっても、王子の化身で すから。
この絵本では、とりわけ、継母に嫌われて城を出て、森に入ったエリザ の様子が、細やかに描写されています。 なんとなく、このお話は海を渡る白鳥たちの命がけの冒険も印象深く、 海のイメージが強かったのですが、マーシャ・ブラウンの絵本によって、 森の神秘も物語の重要なテーマとして深く染み入りました。
マーシャ・ブラウンといえば、古典的名作『三びきのやぎのがらがらど ん』が有名だけれど、『白鳥』のように細密な絵もすばらしくて、ロマ ンティックな「変身譚」と「自己犠牲」、そして神への「信仰」がない まぜになった美しさが、モノトーンの画面からにじむように輝いていま す。
※マーシャ・ブラウンは1962年に『Once a Mouse』でコールデコット賞 を受賞。
(マーズ)
『白鳥』(絵本)著:アンデルセン / 絵:マーシャ・ブラウン / 訳:松岡享子 / 福音館1967
2004年06月28日(月) 『野の白鳥』
2002年06月28日(金) 『DIVE!!』
2001年06月28日(木) ☆大江健三郎体験。
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管理者:お天気猫や
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