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■■ 日本人嫌い
2003年03月06日(木)
今日仕事関係の人と食事に出かけたのだが、そこである人物の話題になった。私も仕事上では良く知っている人だ。その彼(仮に望月さんとしておこう)の両親は、ニューヨークでビジネスを立ち上げたため、彼はニューヨークで生まれ育った。そして米系大手金融機関に就職し、東京支店へ転勤となり、生まれて初めて日本に住むことになったそうだ。望月さんは、顔は東洋人だが英語はネイティブで、日本語は訛りがある。名前からして日本人だが、雰囲気はどちらかと言えば中国人(香港人)のように見える。どのような生い立ちの人なのかと思っていたので少し納得がいった。望月さんはとても頭が切れるし、社交的で人当たりも良い人なので私は個人的に好きだけれど、話を聞いていると会社内ではあまり好かれていないようだ。その理由というのが、なんでも彼は日本人嫌いなのだそうだ。
そんな話を聞いて、私は望月さんに興味を持ってしまった。日本人の彼が日本人嫌いになるにはそれなりの理由があるはずだ。
望月さんの両親は大手レストランチェーンを経営していて、所謂アメリカン・ドリームを実現した成功者である。その成功のお陰で現在はかなり裕福な暮らしをしているのだが、平等だなんだと言っても、結局アメリカは白人至上主義社会であり、日本人である両親が成功を収めるためには並大抵の苦労では済まなかった。彼はそんな両親をずっと見て育った。東洋人であるというだけで味わわなければいけない理不尽な辛酸に耐え忍ぶ両親を見ることが嫌でたまらなかった。彼はそんな両親を見たくないと思い、その気持ちが無意識のうちに両親に対する嫌悪感へ摩り替わってしまったのだ。しかし、外では家の辛さを振り払うかのように明るく振舞っていた。頭の回転も速く、そこそこユーモアもあったためクラスでは人気者だった。
そんな苦労ばかりの両親だったが、彼がハイスクールに入る頃には日本食ブームが幸いしてレストランの経営は順調になり、金銭的にも余裕が出てくるようになった。そして、彼は見事名門私立大学に合格し、超一流のビジネススクールでMBAを取得した後、ピカピカの学歴でウォールストリートの大手金融機関に入社することになった。しかし、そんな一流企業には彼のような優秀な人間は山ほどいる。その中で這い上がるためには、優秀さのみならず政治力、それに要領の良さや強引さ、延いてはずるさが必要になってくる。さらに、両親が突き当たった壁に彼も突き当たることになる。人種の壁だ。東洋人というだけで、信頼されない。平面的な顔つきがアメリカ人には無表情に見えてしまい、何を考えているのか分からないと不信に思われる。彼はどうすべきか悩んだ。そして、彼が取った行動は、彼自身を日本人ではないと思い込むことだった。アメリカ人の表情を真似し、思考回路を真似し、服装を真似し、発言を真似した。感情をなるべく顔に出すように努め、社交性を学び、先導して日本人を含めた他人種の悪口を言った。日本人の悪口を言うことは彼にとっては容易いことだった。自分の両親を思い浮かべれば良いだけの話だ。そして、彼はとうとうアメリカ人の上司の信頼を得ることができたが、身についてしまった習慣は日本にいる現在も抜けないのだ。
望月さんの日本人嫌いの理由をこんな風に想像してみた。わかってます。大きなお世話ですよね、ハイ。
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