料理のために、鍋で湯を沸かす。食材を切りながら、沸騰の瞬間を待つ。でも、気が付くといつも鍋は沸騰していて、沸騰のその瞬間を見られることは滅多にない。今日は見た。まじまじと見てしまった。その瞬間を見たのが久しぶりだからだけではない。それがどういうものだったのかすっかり忘れてしまっている自分がいたからだ。そんな風に記憶の波はよせたりかえしたりして、憶えておくべきものは憶え、忘れるべきものは忘れてしまうのだろう。