痒痛 ☆ 日記 
お酒と音楽と変人と。菫色の日々。

2001年05月16日(水)  幽霊2

3/1くらいは実家にいるのです。そしてこのうちには自分を含めて大人ばかり4人
がみんな別々の部屋で住んでいます。たいていは皆自分の部屋でテレビをみたり本を読んだり好きなことをして過ごし、眠ります。だから午前1時くらいまでは、家のアチコチからいろんな小さな音が聞こえるわけです。
そして一番の宵っ張りはわたしなので、家族みんなが寝静まった3時4時まで、自分の部屋で遊んでいるわけですが、そんな時だけ聞こえる音があるのです。
それも部屋の明かりを消してランプ読書灯にした時だけきこえる音です。

トサッ、or ドサッ、少し高いところから少し重いものが落ちたような音です。
これは実はわたしには聞きなれた音なのですが、今となっては聞こえるハズのない音なのです。
タロウはずっと母のベッドの脇で寝ていました。そして気の向くまま好きなようにベッドに飛び乗ったり飛び降りたりして、暑いとき、寒いとき、さみしいとき、母の布団にもぐりこんだり、フローリングに寝そべったりしていたのです。
だんだん年をとってジャンプ力がなくなり、この数年は上がりたいときはクーン、と鳴いて寝ぼけ眼のひとに持ち上げてもらっていました(タロベーターと呼んでいた)が下りるというか落ちるのは死ぬ日まで自力でしていたのです。
トサッ、は若い頃の、ドサッ、はおじいさんになってからの音です。

深夜わたしだけが起きている時間、この音はずっと毎日聞いていた音でした。
この後にチャッ、チャッ、っと爪の音、板の間を歩く音がしたらそれはタロウがトイレにいくということです。やがてズボッっという音がして、(母の部屋のドアをくりぬいたタロウ穴をフカフカのケモノが潜り抜ける音)廊下のハズレからおしっこの音が聞こえます。わたしは毎回そっと自分の部屋のドアを開けて顔を覗かせます。するとおしっこを終えたタロウはいちもくさんにわたしの部屋に入ってきます。ちゃんとトイレでおしっこしたのをほめてもらうためです。タロウも声をださずにハフハフ頭を押し付けてきてわたしを舐めようとし、わたしも声をださずにえらいえらい、としばらくのあいだ頭やおなかをなでくりこします。
1分もしないうちに彼はなにごともなかったようにまたズボッっと母の部屋に帰っていきます。わたしは音がしないように部屋のドアをしめておしまいです。

午前3時すぎ、ドサッ、という音が聞こえるとわたしは一瞬息をこらえてつい、次のチャッ、チャッ、という音を待ちます。
でも今はどうもトイレにいかないみたいです。


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