2003年10月15日(水) |
『集え!自由の旗のもとに』(オガヒカ小ネタ) |
「緒方さ〜ん、エスプレッソ入れたよ〜?」
「………………」
「クッキーもあるんだけどー。甘さ控えめのラングドゥシャ。これだったら食べられるでしょ?」
「…………………」
「それとも、今から打とうか?この前の名人戦の棋譜検討する?」
「………………………」
返事なし。 ヒカルはいいかげん大の大人の機嫌を取るのに疲れてきた。 肝心の緒方はといえば、大きなテレビ画面の前で、ヒカルが先日和谷に録画してもらったという深夜放送のアニメを見ては、ぶつぶつと文句をたれている。
「まったくもう、そんなに気に入らないんなら見なきゃいいだろ?!」
ヒカルはテレビのリモコンを緒方の手から奪い取った。
「……うるさい!キャプテン・ハーロック
は俺の青春だ!!」
それなのに…… くっ、と緒方はうつむき、拳を握りしめた。ぎり、とその拳に力がこもる。
「なのに……何故、ハーロックの声が
井上真●夫じゃないんだ?!
教えてくれ、友よ!!」
「………………………」
握り拳で盛り上がる緒方。
「教えてくれ、友よ」って言われて、どう返せっちゅーねん 社あたりならきっとそうツッコむのだろうが、いかんせんヒカルは東京生まれの東京育ち。
(緒方さんがこんなにアニメ好きだなんて思わなかったなぁ……)
ひとりで盛り上がる緒方を見て、そっとしておいた方が良いらしい、とヒカルは判断し、リビングに戻って冷めかけたカフェオレを一口飲んだ。 しかしあんなにあのアニメが好きで、昔のそれに思い入れがあるのなら、それを見せて上げたら、緒方は喜ぶだろうか?
ヒカルはいそいそと部屋の電話を取り上げた。
「もしもし〜?倉田さん?あのさぁ、倉田さんって、昔のアニメのビデオたくさん持ってるって言ってたよね〜」
「違う!ハーロックはこんな声じゃないー!!」
(まだ言ってるよ) ヒカルはくすくすと笑いながら、倉田が持つ「キャプテン・ハーロック」シリーズのビデオを貸して貰えるかと頼んでいた。
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