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 ハリネズミくんと森のともだち/セルゲイ・G・コズロフ

『ハリネズミくんと森のともだち』/S.G.コズロフ, S.A.オストロフ, 田中 潔
単行本: 133 p ; サイズ(cm): 22
出版社: 岩波書店 ; ISBN: 4001155605 ; (2000/05)
内容(「MARC」データベースより)
長い冬が終わり、ロシアの森に、いっせいに花咲く春がやってきました! 白樺とモミの森に住むハリネズミくんと、小グマやウサギなどの仲間たちがくりひろげる、ゆかいで、ちょっとかわったお話22編。


『ハリネズミくんと森のともだち』は、予想外に良い本だった。面白いというより、「良書」であるといった感じ。

ロシアの森を舞台に、四季を通じての動物たちの姿が描かれているのだが、いかにもロシアっぽく、冬の厳しさや、待ちかねた春の到来などが、いきいきと書かれている。

おおかたのファンタジーは、作者が完璧にファンタジーの世界に入り込めずにいるものが多く、どうも中途半端であるという欲求不満を感じるのだが、これに関しては、作者は見事に想像の世界に入り込んでいると言えるだろうと思う。冬が長く厳しいロシアでは、嫌でも想像を逞しくしていないと、とても暮らしていけないのかも・・・。

もともと、動物が洋服を着ているような話が好きなので(特にハリネズミは贔屓)、それだけでもポイントは高くなるのだが、寓意のない話なら、なお良い。またこの作者の感性が、ちょうど自分に合っていた感じもして、とてもお気に入りの本となった。

かわいらしいばかりではない。最後に木の下敷きになったコグマくんが、瀕死の重傷を負い、死の影と、自然に生きるものの無常さを伝えているところなど、ある種の哲学ではないかとさえ思える。

最終的に「死んだ」とは書いていないので、果たしてコグマくんは死んだのだろうか?と、読んだ子どもたちは心配をするだろう。そうして、誰かがいなくなることの寂しさや辛さを学んでいくのだろうなと思った。

で、本当にコグマくんは死んだのだろうか?もし子どもに聞かれても、私も答えられないし、どんな答えをすればいいのか、わからない。マジに考え込んでしまった。

ちなみにコズロフは、下記の「はりねずみ本」で知られている作家である。

『きりのなかのはりねずみ』 世界傑作絵本シリーズ/ユーリー・ノルシュテイン (著), セルゲイ・コズロフ (著), Yury Norshteyn (原著), Francheska Yarbusova (原著), Sergey Kozlov (原著), こじま ひろこ (翻訳), フランチェスカ・ヤルブーソヴァ
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夕暮れに、はりねずみはこぐまの家へでかけます。ふたりでお茶を飲みながら、星を数えるのです。こぐまの大好きなのいちごのハチミツ煮を持って歩いていく途中、霧に浮かぶ白い馬に心を奪われて、はりねずみは霧の中へと入っていきます。

短編アニメーションの傑作『きりのなかのはりねずみ』をもとに作られた絵本である。監督は、世界的に評価の高いロシアのアニメーション作家ノルシュテイン。児童文学作家セルゲイ・コズロフが物語をつくり、アニメーション美術監督のフランチェスカ・ヤルブーソヴァが絵を描いた本書は、静かで幻想的な1冊となった。第48回産経児童出版文化賞美術賞を受賞するなど評価も高く、韓国版も出版されている。

あたりの分からない中、手探りで進んでいく道は、ノルシュテインが言うようにまさに「人生」。子どもたちは、そのハラハラドキドキを楽しむだろうが、大人はその繊細な世界にしばし日常を忘れるだろう。あらゆる世代を魅了する美しい1冊。(小山由絵)


2005年11月13日(日)
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