うさぎ日記
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2012年05月29日(火) 車椅子のフィアンセ



認知症になる前に、母がつくった押し花の額。
母が一番気に入っていた作品。



あるかたの息子さん、付き合っていた彼女と結婚することになり、
両家、親戚、友人を招いて婚約披露のパーティーの席上、
急に彼女の気分が悪くなり、救急車で病院へ。
残された御客は「悪阻か?」などと呑気なことを言っていたが、
病名は「脳幹出血」だった。

意識不明のまま集中治療室から出て来た彼女は、治療を続けた結果、
介助があれば、車椅子で外出も出来るようになったが、
自分の意思を伝えることができないひととなった。
回復は難しいと言われた彼女の両親は、そのかたの息子さんに
「婚約を破棄して欲しい。」と、申し出られたそうだ。
息子さんは、「どんな姿の彼女でも結婚したい。」と言われたそうだ。
「5年待ちます。」と、そのかたは相手の御両親と息子さんに告げたそうだ。
「自分で車椅子を操作して、自分のことが自分で出来るようになったら、嫁として迎えます。」
と。
5年後、彼女は回復しなかった。
5年間、彼女の元へ通って、介護にも参加されきたそのかたと息子さんは、
彼女の心中を思うと、身を切られるようではあったが、婚約を破棄したと言われた。
「ほんとうにねー。たとえ車椅子生活でも、最低自分のことは自分でできて、少しでも会話が出来たら良かったんですけれどね。
全部、ひとの助けが必要で、彼女が何を思っているかも解らないのですから。」
「それで結婚生活では、息子さんが可哀そうですものね。」
「そーなんです。彼女も可哀そうだけれど、息子も可哀そう。
 婚約破棄は辛かったですよ。今でもその時のことを思うと辛いです。」

最低限の自分ことが自分で出来ない。意思の疎通が出来ない。
というのは、認知症も同じです。
どんな姿でも、共に暮らすことがどんなに辛くても、そういうひとを見捨てることはもっと辛い。



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