小馬鹿なさっかの処刑人日記
GET TO HEAVEN.
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2002年01月24日(木)
ピクミン 愛のうた

遅く帰ってきた私がまだ、
ごはんも味噌汁も食い尽くしておらず、
ブリの塩焼きにはまだ箸さえつけていなかった時。
おかんがギャアギャアと騒音を発しはじめた。オイル切れだ。

おかんはフォトショップ(画像加工ソフト)を起動していた。
横からいろいろと口をはさんだが、
根本的に理解してないのでついに隣に座る。
教えはじめると、おかん、いきなり無気力モード。

「あかん。そんなん言われても、わからへん」

さっかが処理するのを、横で待ってるだけモン登場。だらり。
こ…こいつ。

「あんなあ、理解しようとしてへんやろ」

「してへんよ。あんたの説明、なんもわかれへんもん」

「なにゆうてんねん、普通は誰も教えてくれへんの!
 ヘルプ見たり、人の見てて必至で覚えんの!
 教えてもろてるおかあさんは幸せやねんで」

「あーあーあー、そらね、
 それはね、あんたはおりこうさんでしたよ、はんっ」

逆ギレ?


しかも加工してんの、うちの兄貴の写真。


しばらくして、事件もひと段落。
おかんは以前から気になっていたらしい、
「ピクミン 愛のうた」を検索しはじめた。
私はブリの塩焼きを食った。うまかった。

おかんピクミンの公式ページを発見。
愛のうたを聞けると知り、年甲斐もなく大はしゃぎ。
そしてなぜか、音楽を聴けるページをプリントアウト。ありえねえ。
ほうっておいた。
ブリはうまかった。

いよいよおかんは、愛のうたを聞けるというボタンをクリック。

  ぼくたちピクミン あなただけについて行く
  今日も 運ぶ たたかう 増える そして食べられる

聞き終わるとおかん、放心。
続いておかんがとった行動は、
比較人類学上もっとも興味深いものだった。
彼女はもう一度、愛のうたを聞けるというボタンをクリックした。

  ぼくたちピクミン あなただけについて行く……♪

復唱しはじめた。声に出して復唱しはじめたのだ。
ピクミン。
プリントアウト。そして復唱。
ありえねえ。ありえねえよそれは。

さらにそれから彼女がとった行動は、
ヒト科ヒトの心理状態として、
あのアリストテレサでもマザー・テリスでも解明できないだろうほど、
複雑怪奇、奇妙奇天烈摩訶不思議、出前迅速落書き無用なものだった。
やつはもう一度、愛の歌を聞けるというボタンをクリックした。

  ぼくたちピクミン あなただけについて行く……♪

歌いこみ…?
プリントアウトして復唱して、さらに歌いこみ……。
ありえねえ。ありえねえよそれ、なし、なしそれ。

しばらくすると、ちょっと静かになった。
何故かおかんはピクミンのホームページの戻り、
ゲーム「ピクミン」の解説を読み始めていたのだ。
恐るべき脅威の進化速度、と記さなくてはなるまい。
おかんは激しく独り言をつぶやいた。

「ピクミンは三色います…… ふーん
 オリマーについていきます…… だって」

「へえ……(がつがつ)」

「ふーん オリマーだって」

「……(ぱくぱく)」

「オリマー」

「……(もぐもぐ)」

「オリマー」

なんで反芻?

こうしておかんは何故か、
我が家の誰より「ピクミン」に詳しくなって帰還した。
その熱意フォトショップにむけらんなかったの?
ていうかなんで翌朝こう言うの?

「ぼくたち ピ〜クミィ〜ン〜〜……
 今日も…… なんやったっけぇ
 なあ、なんやったっけーー」

きくな

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 noted by さっか