私は今、時折WEB日記をつける生活をしているわけだが。
高校生の頃は、フツーの手書きの日記をつけていた。
それが何かの拍子に発見されるたび、
私は懐かしい思いを胸に、その小さな表紙を開く。
平凡な高校生活が綴られた過去の記録。
今見ると、もはや全てがビミョーな話のタネだ。
例えば、1997年6月20日、金曜日。
この日は「ファイナルファンタジータクティクス」の発売日だった。
台風のため高校は午後から休校となったが、
私は暴風雨の中、予約しておいたコンビニへ自転車で急いだ。
その後、兄に奪われることを恐れて秘密裏にプレイ開始。
6月22日、日曜日。FFTの存在が兄貴にバレる。
兄貴はペンダントを掴み、ダウジングで私の部屋の捜索を決行。
見当違いな所を探しつつ、「オープニングだけでも見せろ」としつこい。
しかし私は一歩も譲らず、FFTを隠し通した。
6月31日、月曜日。さっかのテスト前の姿が明らかに。
「昨日は多くの時間を英単語に費やしたがあまり覚えていないうえに、
プリントからしか問題が出ないことがハンメーってゆうか、
私の昨日は何だったのか、ああ空よ、ああということを言いたい」
壊れかたが今とあまり変わっていない。
9月2日、火曜日。
「朝■君の話し方は大槻ケンヂに似ていると判明」
この日私は、帰宅するや否や風呂に入り、すぐさまゲーム屋へ行った。
「体が活動的になっていたのである。しかし新品うりきれ。
中古なんていつ入るかわかんねぇ。ちっ。トラバターくえ。
あちこちまわってやっと中古のポポロクロイスを買う」
ここで、「トラバターくえ」という気になる言葉が登場する。
これは当時、一部の人間(約2名)が多用した一種の悪態で、
トラがぐるぐる回ってバターになったものを食え、という意味だ。
わかりにくいけど、とりあえず命令形だし、悪態っぽい感じがする。
そして9月21日、日曜日。文化祭の二日目。
「美術室で、赤に白抜き文字の『シャア専用』うちわを作成」
当時の私の頭の中は、所詮こんなものだった。
「おばけやしきに行くと、ニュータイプの安藤先輩が、
ベールで顔を隠したワケのわからんカッコをしていた。
もう一人同じような人がいたので、2号と名付けた。
私達はニュータイプ安藤先輩に安内された」(←誤字)
私達、とは当然、私と友人バカ(作戦名)の約2名を指す。
当時の我々は、連日行動を共にしていた。
(ちなみに二人ともZZガンダムをビデオに録画していた)
「マイムマイムは熱いので参加。
私の右にいたクマちゃんは、隣の男子群に引っ張られ、
ガーッて走ってっちゃったので、私は手ェはなした。
付き合いのいいクマちゃんは、転びそうになりながら、
男子どもと一緒に炎に影を刻み、光のふちどりとなっていた」
無駄に文学的。
うちの高校には、マイムマイムの時に可能な限り炎に急接近し、
可能な限り高く跳ぶや否や可能な限り遠く離れる、という、
激しくもあわただしい伝統があった。
そして、そんな興奮も落ち着き始めた10月23日、木曜日。
「帰ってからはFFタクティクスをやった。
アルテマのラーニングはつらいし、死ぬ。
兄貴がコントローラーうばうから、つかんでわめいて、
その後にポポロをやり、闇の世界まで進む。
なんか母ちゃんが塾へせかすので、
『せっかち』とか言って放置しておいたら、
彼女は時間を1時間まちがっていた」
最後に、ある日の日記の最後の言葉を引用しておこう。
「なんだか日記とは、これすなわち、スッゴク人に見せたくない」
……この数年後、私は日記をWEBで公開する人間と化す。