ゆうちゃん(いかれアート系)が来た。
横浜から新川崎までは横須賀線で一駅、10分程なので、
横浜に着いたら連絡してくれ、と言っておいた。
届いたメール。
「川崎、そんなのはない〜」
…川崎は、ある。しかもうちは新川崎だ。
二年ぶりに会ったので、服の雰囲気などは変わっていたが、
いきなりバシバシ叩かれた。
「わぁ〜ひさしぶり〜!(バシバシ) 変わらないね〜!」
まさにゆうちゃん。
しかし私はいい加減、皆に「変わらない」と言われるのに飽きた。
「え〜、あ〜、髪型は変わったね〜!」
ナイスな慰め方だね。
私の部屋に入ると、とりあえず探査にかかるゆうちゃん。
クレジットカードを発見し、
「うわ〜! これ持って帰っていいの〜?」
新しい発想だね。
「鯖味噌煮」という言葉に反応して、
フォークから食べかけのケーキがポロッ…。
「違うんだよ、鯖の味噌煮に心奪われたんだよ〜」
原稿を手伝ってもらっていると、
「絵描きたぁ〜い! ここに落書きしていい?」
…それは下書き済みの原稿用紙だ。
「でもよく漫画とかで、枠の外に絵があるじゃん。
ムンクの叫びとか描いてあるじゃん。
ムンク描きたいよ〜」
いいからベタ塗れよ。
やがて、星空のシーンを一生懸命描いてくれたゆうちゃん。
「ああ、宇宙って、偉大だなぁ」
悟りやがった。
奴とは久々に会ったので、お互いの近況についても話が及んだ。
ゆうちゃんは体調不良で学校を休学している。
休学申請が一年単位でしか出来ない学校なので、一年間休学なのだ。
何かと鬱屈することが多いらしい。
先日は、親が海外旅行を禁止するのに抵抗し、家出をしたそうだ。
「伊豆に行ったよ〜」
……。
旅行じゃん?
まぁ、友達の家に転がり込んだりするよりは、ずっと健全だなあ。
でも家は大事だよ。
「うん、家に帰ったら、家も案外居心地よくてさ〜。あはは」
この子は大丈夫だと思った。
というわけで、久々にゆうちゃんと楽しい時間を過ごした私。
ゆうちゃんに「君アタマおかしいよ」とかツッコミを入れてると、
広い世界の片隅に、自分の居場所を見つけた気分になれる。
私にもまだ役割が。
ゆうちゃんはアタマがおかしいので、
一般の人と一緒にいても理解されず、それが苦痛となる。
常識から解き放たれた自由な世界を求めるゆうちゃんは、
やはりアタマのおかしい彼氏と付き合い、
ケーキを食べたりケーキを落としたりしながら、
時折ふと涙を流して温泉地へ行くのだ。
解説になってないけど、そんなわけで。
私は原稿があるんで。