ニッキ ゆり 【HOME】
- 2003年01月20日(月)
入荷してきた透明なビニールに入った洋服。
一着ずつ値札をつけてビニールをやぶる。
その瞬間がとても好き。
一番最初に手にする、誰も触っていない洋服。
ビニールから出しながら「似合うかな?」と鏡に映してみる。
自分で値段を決めて、値札をつけて陳列棚に綺麗に並べる。
並べた側から手にとって見ているお客さんを見ると
なんだか嬉しくなる。
声をかけて買ってくれたらその喜びは最大級に膨らんで
ニコニコしながら「ありがとうございます」と言う。
その瞬間が忘れられなくて、ずっと続けているバイト。
楽しい!どうしよう!
今の洋服屋を始めて今月で半年。
店長とも社員のモモさんとも随分と仲良くなった。
楽しく仕事をしながら、だけど、きちんとやるべきところはやる。
そういうのがとても気持ちいい。
声をかけたのに無視するお客さんもいて
そういう時はかなりムッとするけど
試着して買ってくれるお客さんがいるから
プラスになる。マイナスは今のところ無いと思っている。
感じていないだけかもしれない。
お給料が入ったら春物のチュニックを買おう。
あとプリーツスカートも。
施設の実習は1・2組と3・4組に分かれていて
ワタシは1・2組の前半組みだった。
3・4組の後半組みだった高屋君がワタシと同じ施設に行っていたらしい。
「先生に聞いたけど、同じ施設だったいたいだね?」
「え?あ、そうだったの?ワタシ初耳」
「ボランティアとか行ってる?」
「あーーー・・・まぁ、それなりに・・ね、最近断ってるけど」
「なんで?なんかあったの?」
それ以上つっこまないでくれ!と言いたくなった。
「まぁ、忙しいしね。今バイトいっぱい入れてるから」
そうやって言うのが精一杯だった。
だけど、思い出してもそんなに苦しくならなかった。
無理して忘れようとしていた時に比べたら
今は自然に思い出せるようになったかもしれない。
でも、高屋君が教室へ戻った後、喫煙所で1人、いろいろ考えてしまった。
切なくなって胸がギュっとなった。
元気なのかな。きっと相変わらずなんだろうけど・・・
声、忘れちゃったよ。
戻りたい、とか、また会いたいとか
そういうことは思わない。
でも、どうして嘘を並べてワタシの側にいたのか
それを知りたいと思った。
だけどもしも今その理由を知ってしまったら
せっかく前向きになれたのに
また後ろを振り返らなくちゃいけなくなる。
それだけはもう嫌だ。
そうなるなら知らなくてもいい。知りたくない。
ワタシはこれでいい。
今のままでい。
今をちゃんとがんばるんだ。
早く先へ進みたいけど、1歩1歩確実に歩いて行かなくちゃ。
「いかなくちゃ」ではなくて「いこう」