ナ イ シ ョ バ ナ シ
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包まれる。
体全体がすっぽりと。
・・・無音。
コポポポという、涼しげな音。
透明な世界。
拡大されて見える、ゆがんだ世界。
ぼうしがはがされる。
コンタクトレンズが流れる。
それでも止まれない。
そんな魅力が。安心感が。この世界にはあった。
みなが「おかえり」といっていた。
でも彼らの中では、私は客人。
ずっと彼らの中にとどまる事は出来ない。
とどまるには、ある覚悟が必要だ。
彼らと交わす、言葉や呼吸は、へその緒と共に断ち切られた。
それでも、どこかで忘れられなくて。
今日も彼らと戯れる。
顔に、手に、足に、からみつく感触が、肌を滑る心地良さが、
一瞬すべてを消し去って。
そのうちに、ただ手足を動かす傀儡となる。
これほど楽な事もなく、白い自分もいない。
しかし、楽な代償が現れる。
彼らと離れたときの、この体の重さ。
きっと私の中の彼らと、私を包んでいた彼らが引き合っているんだ。
だから、名残を惜しんで体が重くなる・・・。
無理やり引き剥がす。
地に足をつけてしっかり立ち上がる。
グラリと景色が揺れて、シャワーから流れる彼らは
見方によって、ダイヤモンドみたいに輝いて消える。
「さようなら」
呟いて、元の世界へカムバック。
あとは、ベットの波に沈むのみ。
「おやすみなさい。」
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