女子高なので、明るくキャピキャピの楽しい卒業式だった。
式が終わって教室に戻り、最後に 担任教師(28歳独身男性、さわやか系) やにわにフォークギターを取り出し 「スーツ姿で歌うのは始めてだけど・・」と、おおいに照れながら 松山千春の 「君を忘れない」を歌い出した。
きゃーきゃー歓声を上げる女の子たち、 先生の周りで一緒にポーズを取り、写真を撮りまくる 笑顔、笑顔、笑顔、笑顔。
先生の歌は、ちっともうまくなく、歌詞もとちり ギターも追いつかない。 だけど泣けるのは なぜなんだろう。
古い教室、褪せたカーテン、 ひだもとれてすり切れた制服のスカートが揺れる、 並んだ机の中に詰まっている、辞書、ノート とりどりの乙女の荷物、
汚れた上履き、まっかなほっぺの乙女達 そこにそそぐ日差しと先生の下手な歌、
どんな映画も かなわないよ、 アカデミー賞受賞作より 君たちの日常の瞬間こそが なによりも尊いのだ。
君たちはまだわからない、 気付くこともないかもしれない。
M子へ 卒業おめでとう。
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