+女 MEIKI 息+
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「・・・じゃ、そういうことで。」
「はあ?」
その聞き返した声は、小さく静かな診察室に響いた。隣同士との仕切りは、パーテーションのみで扇状に7つの診察台のあるその狭い部屋でひときわ浮いた形になった。
患者は指定された椅子に座り、看護婦(助手)は、一人の患者に2人つづつく。それ以外にも、細かい責具を消毒する助手が数名大勢が押し黙って診察を待つ部屋は、人だらけであった。
診察の順番を待つ患者は、背凭れ椅子に座ったまま待合室で待たされた時間と同じだけの時間をひたすら待つ。
やっと自分の順番になり背凭れが倒されて、口を開ける。流れ作業の中のヒトツの部品になったような気になる。覗きこむ先生の小首を傾げるのを横目で見ると少し、厭な気分と不安が湧いて出てくる。
「レントゲンを撮りましょう」
先生はそう言うと同時に、次の患者が待つ椅子に向かっていた。
限られた視界の中に先ほどより神経質に器具を消毒していた助手が居なくなる。たぶん隣の部屋へレントゲンの準備をしに行ったのだろう。手を伸ばせば届く処にある、銀色の器具をぼんやりと眺めていると程なく隣の部屋から名前を呼ばれた。
初診の時に一度経験があったので、それ程珍しくもないような素振りはしていたが、やはり歯科は苦手である。落ち着いた振りをしていても鼓動が自分でも判る。
レントゲン写真の現像まで、椅子に座ってここでもまた待つ。準備が出来たと案内をされた診察用の背凭れ椅子でもまた待つ。緊張と眠気の入り混じった状態になったころに、やっと先生が戻ってきた。
頭蓋骨の下半分が映し出された黒いフィルムを見ながら先生が言う。
「ほら、この辺りの歯が腐ってきてるようだね、これは自然に抜けるまでどうすることも出来ないね。抜く気になった頃にまた来て下さいね。じゃ、そういうことで。」
「はあ?」
一月上旬から通い始めて、治療を受ける度に薬が合わずに熱をもったり化膿したりの繰り返しで、終いには腐ったから抜くって?詰めていたモノが取れてそれで治療に行ったはずなのにこんなことになるなんて。
怒りというよりも、呆れてしまいました。
診察室を出て受け付けに「幾ら料金がかかっても構わないから今までの治療経過と治療方法、そして治療総料金を表記したものをちょうだい。直ぐには、他の患者さんも居ることだし無理なのはわかるので来週には取りに来ます。」そう告げると、慌てて奥で診察をしている先生に尋ねるために席をはずす。戻った受付の人に、その診断書にかかる料金を改めて尋ねたところ普段より数倍も丁寧な姿勢で無料ですと告げられた。
一先ず、その診断書を持って他の歯医者に行こうと思う。
ただ、これだけではどうも納得がいかないし、不明な点が多すぎるので予想するに自分の行動からいってもちょっと一悶着あるような気がする。
マジで、どなたか歯医者の選び方を教えて下さい。(切実です)
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