+女 MEIKI 息+
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この時、この歳で生きているということを意識してみる。 そんな、大それたことでもなくほんの些細なことで。(戦争や貧困という厳しさが、この暖房の効いた部屋でマシンに向かう現状に直接関わる経路を想像するのは、わたしには困難だから。)
東京で生まれ育ったわたしには、遠い親戚の家で出会う藁葺き屋根や土間、機織りに繭、そして見つける工芸品や郷土習慣や風習、それらのものが全て昔からのものでありながら新しいものとして認識されていく。
そして年は過ぎ。
随所で目にする日本の伝統的な芸術は、わたしを深く共感させる。 その感情の一部には、幼い頃に目にしていた日本という地に生まれたゆえの懐かしさがあるのかもしれない。 それでも、どこかに海外の芸術を見ると同じように、日本の芸術を見ているのかもしれない。 日本に居ながら。それが、実際に見たいと思わなければ見ることの出来ないものが沢山あることにも気付く。
名作を残した芸術家が生きた時代とは違うからと、一括りには出来ない時の流れをちゃんと感じようと思ったり。
そんな風に人形師の方と会わせていただくたびに思うのだけれど、やっぱり何も伝えられないまま、人形の顔に魅入るばかりであった。
昼は咲き、夜は恋ひ寝る、合歓木(ねぶ)の花、君のみ見めや、戯奴(わけ)さへに見よ
昼に咲いて、夜には恋しい想いを抱いて寝るという合歓(ねむ)の花を私だけに見させないで。ほら、君もここに来て見てごらん。
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