short story


2002年10月22日(火)


「屋根で歌う」



貴方の深い所へ入り込むことは
ついぞ叶わなかった。
私に落ち度があるとしたら
それは一つだけで
その一つが致命的だった。

屋根の上で貴方は歌う。
どうやってそこへ登ったかなど
私は尋ねない。
言いたければ言うだけのこと。

私もそこへ登りたいと
喉まで出掛かって飲み込んだ。
理由なんてない。

貴方が歌う時
僕は横に座ることよりも
貴方がなにに向かって歌っているかに
ただそれだけに意識を集中して
そして高い高い屋根を見上げる。

眠気には寄り添い。
朝には別れよう。
見比べてみるといい。
痛々しい傷と
明日の予定と。

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日記才人