銀河8丁目10番地の日誌

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TOL 史上最大の間違い  2005年10月19日(水)


第1章。
主人公(プレイヤー)たち一行は、さらわれたヒロインを助けるために、
どこぞの山賊を追いかけて、アジトにやってきていました。

そうして、おそらく初のボス戦らしいボス戦へと突入したのですが・・・

「犬! 犬が邪魔だー!」
「HP激減してるぞ」

相も変わらず激弱プレイヤー、
序盤のボス戦に、早くも圧され気味です。
しかし、こちらには回復役メガネハンマーがいるのです。
(※勝手に命名されたあだ名です、ご了承ください。)

「ファーストエイドを頼む!」
「承知した!」

主人公は、ファーストエイドの命令を出しました。
ところが、数秒、数十秒、主人公のHPは何故か全く回復されません。
ファーストエイドの詠唱は既に終わっていますし、
詠唱を邪魔されたわけでも無さそうなのです。

「ファーストエイドー!」
「承知した!」

再度指示を出しますが、やっぱり回復されません。
そうこうするうちに、主人公は力尽きてしまいます。
グミ類、ライフボトルもあっけなく切れました。

こんなことが、実に4、5回続いた後、序盤のボス(モーゼス)にあっさりと敗北した一行は、
ゲーム開始後1時間足らずでゲームオーバー画面を拝むハメになり、
惨めにデータをロードし直していました。

ボス戦直前のセーブポイントで、対策会議中の一行です。

「回復をきちんとしないからだろう」
「ファーストエイドは何回も頼んでるんだよ」

リボンの騎士風味の女の子が忠告します。
実際、メガネ君には何度も回復指示を出していたはずなのです。
女の子は不思議そうに首を傾げました。

「いや・・・レイナードはきちんとファーストエイドを発動させていたぞ?」
「え?」
「戦闘中、何度か光ってたし」
「いや、そうじゃなくて」

主人公がひょいと、その話は置いといて、という仕草で詰め寄ります。

「レイナードって誰?」
「だから・・・そこの、ウィル・レイナード(フルネーム)のことだ」

メガネを指差しながら説明する女の子。

「え? ウィルって・・・どっち?」
「・・・バカにしているのか、或いは、頭でも打ったのか?」
「メガネハンマーがウィル、剣士の私がクロエだろう」

うら若い乙女にメガネハンマー呼ばわりされたウィルでしたが、
聞かぬ素振りを決め込んでいます。

「そして、お前がセネルだ」
「・・・ええッ!? 俺(主人公)がウィルじゃないのか!?」
「お前もう1回ニューゲームしてこい!!」

メガネハンマー・ウィルが超高速で、
異次元から取り出したコントローラを投げつけました。

シリーズ初、それは史上最大の間違いでした。
プレイヤーは、戦闘中、どこをどう取り違えたか、
主人公(セネル)の名前をウィル、メガネ親父(ウィル)の名前をセネルだと勘違いしていたのです。

つまり回復術ファーストエイドは主人公ではなく、延々とメガネ親父にかけられていたわけで、
(自分で自分にファーストエイド状態となり、)
主人公くんのHPが回復されるわけがないのでした。

開始1時間でようやく気付いた、重大問題です。

「・・・で、クロエって誰?」
「取説を読め!」

ウィル(覚えました)はまたも高速でレジェンディアの取り扱い説明書を投げつけます。
マッスル親父はウィル、半身タイツの女の子はクロエ、白タイツ主人公はセネル、とばっちり書いてあります。

「だって全員3文字な上に、女か男か、ぱっと分からない名前だし・・・」
「文字数の問題なのか、それ?」
「ウィルって主人公っぽい名前だし」
「そんなこともないと思うが・・・」

セリフを何度かすっ飛ばした経験を持つセネル(プレイヤー)、
クロエがクーリッジと呼ぶ意味が分からず、誰のことを言っているのか見当付かなかったようです。

「よし、メガネはウィル、リボンの騎士はクロエ、そして主人公はセネル・・・」

呪文のように繰り返し暗記を始めるセネル(プレイヤー)の背中に、
普通、主人公の名前忘れるか?
と冷たい視線を送るパーティーメンバーたちでした。


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「おい、ノーマって誰だ!? マッスルハンマーのことか!?」
「まだ覚えてなかったのか!?」
「えーと、何してんの? あれって何の話?」
「・・・知らない方がいいぞ」

そしてさらに数分後、
水晶の森でミーハー娘(3文字)が仲間に入った一行の間に、再び、
”誰が誰だか分からない症候群”が発生することは、ほぼ必然だったのです。


パト / 宇宙書店

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