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2005年07月02日(土) 王子様への手紙

前略 王子様



お手紙ありがとう。

なかなかお返事が書けなくてごめんなさい。
先週は色々と忙しく、
今はプレッシャーがのしかかってきて精神的に不安定です。
こういう時に王子様はどうしていますか?
眠ってしまうのでしょうか。
あなたのように仕事やいろんなことが要領良くできると
あんまり困ることもないのでしょうか。

すぐに色々なことを投げ出したくなってしまいます。
私は、とても怠惰です。
もっと楽に過ごしたいといつも思います。
でも、どうしたらいいのかよく分かりません。

夏になると、大学二年生の時に行った、
ベトナム旅行を思い出します。
初めての一人旅でした。

メコン川近くの町(その旅で、私はガイドブックを一切開かなかったため、
町の名前が分からないのです)からホーチミンに帰ってくる途中、大雨に遭いました。
現地で出会ったベトナム人のおじさんの、バイクの後ろに乗って
合羽を被っても顔にバシャバシャかかる雨をよけていました。
出発前に500円くらいで買ったビーチサンダルの足下は泥にまみれて、
砂利が跳ねて傷だらけになりました。
湿気がうっとおしい、夜のツーリングでした。

知らない人のバイクに乗って、
何十キロという道のりを走るだなんてことがどうしてできたのか。
今となっては不思議な気持ちです。
でも、他に信じる人もいなかったし、目の前にいる人を信じたのだと思います。

メコン川では、蛍を見ました。
夕焼けを見ながら舟に乗りました。
河岸で、瓶ビールを飲みました。
「チャー」だったかな? 「乾杯」という意味の言葉を教えてもらいました。
たくさん蛍を捕まえて、「きれい、きれい」と騒いで、
瓶に入れたけれど翌朝見たらただの虫になっていた。
朝起きて、ぞっとしたことを覚えています。

大きな車道の脇には、いくつもいくつもカフェがあって、
どこも同じようにハンモックとココナッツのジュースを置いている。
そのジュースというのが本当に、
ココナッツの実に直接ストローをさして果汁を飲むから甘くて美味しかった。
コーヒーも、どこへ行っても美味しかった。
ベトナムのコーヒーは、ミルクが甘いのです。
私を乗せてくれたおじさんは、
眠気覚ましに良くカフェに寄り、コーヒーを飲んでいた。

来る日も来る日もどこだか分からない、知らない場所へ連れて行ってもらった。
屋台でフォーを食べた。ベトナム戦争の記念館へも行った。
ベトナムの、中華街も見た。

不安で不安で仕方がなくて、夜はよく一人で泣いた。
特に、食中毒で血便が出た時は、本気で泣いた。
泣いても仕方ないけれど、(その上汚いけれど)お腹が痛いし血が出るし、
どうしようもないので海辺に行って、砂浜で真っ赤な血を出しながら
わんわん泣いた。
帰りたいとか、そういうこともあまり思わずに泣いた。
たぶん、痛いから泣いたんだろうと思う。

海の湿気と涙と、たまに降るスコール。
ベトナムには、水のイメージがある。

こうして思い出を振り返ると、少し楽になりますね。
読む方は長くて、たまったものではないかな。

あなたは随分長い距離を歩いたんですね。
足がつったり筋肉痛になったりしなかった?
馬場に来たのなら、今度はうちに顔を出してください。
お茶くらいは出しますよ。
あなたの顔を毎日見られたら、きっと世界はバラ色なのに、
なかなかうまくいかないものですね。

夏は、どこかに旅に出たいです。
国内でいいから、どこか。

それではまた。
お返事待っています。

かしこ


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