橋本裕の日記
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2001年06月28日(木) 政治と選挙

政治家を選挙で選ぶことをはじめたのは、紀元前6世紀の古代ギリシャ人である。もっともギリシャ人は選挙よりも抽選制を尊重していた。ギリシャ民主政治の立て役者のペリクレスも抽選で外れてばかりいたので、結局執政官になれなかった。

 抽選制度をやめて選挙を絶対的な選抜方法に格上げしたのは古代ローマである。候補者を英語で「キャンディデイト」というが、古代ローマ時代、候補者は看板として目立つように輝く白に染めた衣装をまとった。この輝く白という意味のラテン語「カンディドウス」が語源だという。

 選挙制度が日本に導入されたのは明治維新以後である。そもそも為政者を選挙で選ぶなどと言う民主的な観念がなかったので、このことは随分奇異に感じられたようだ。福沢諭吉でさえ留学先のフランスでこの制度を知って、おおいに戸惑っている。「福翁自伝」から少し引いておこう。

「ソレカラまた政治上の選挙法というようなことが皆無わからない。わからないから選挙法とは如何な法理で議院とは如何な役所かと尋ねると、彼方の人はただ笑っている。何を聞くのかわかりきったことだというような訳け。ソレが此方ではわからなくでどうにも始末が付かない」

「また、党派には保守党と自由党と徒党のようなものがあって、双方負けず劣らず鎬を削って争うているという。何のことだ、太平無事の天下に政治上の喧嘩をしているという。サアわかならい。コリャ大変なことだ。何をしているのか知らん。少しも考えの付こう筈がない。あの人とこの人とは敵だなんというて、同じテーブルで酒を飲んで飯を食っている。少しもわからない」

 西洋において選挙制度はギリシャ・ローマ以来二千数百年の歴史を持っている。しかし、日本でその歴史はたかだか百年あまりにすぎない。諭吉が今の日本の政治を見たら、どう思うだろう。「何のことだ、太平無事の天下に政治上の喧嘩をしているという。サアわかならい」と、やはり苦笑するかも知れない。


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