橋本裕の日記
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2004年11月17日(水) 複線型の教育

 オランダの子供たちは小学校を卒業すると、中等学校(中学・高校)に進学するが、ここで3つのコースに分かれる。

�‖膤惱猗�コース(VWO)6年制
��高等職業専門学校準備コース(HAVO)5年制
�C翕�職業訓練所準備コース(VMBO)4年制

 オランダの学校は入学試験がないので、それぞれのコースを修了し、卒業資格(ディプロマ)を取得すれば、無条件で上の学校(大学、専門学校、訓練所)に行くことができる。しかし、オランダの学校は実力主義で、飛び級もあれば、落第もある。

 ディプロマを取れずに、中途退学することもあるらしい。しかし、その場合も、別のコースに席をうつしたり、一旦社会に出てから、ふたたび学校に再入学することができる。必要なときに、必要な教育を受ける権利が保障されているわけだ。

 オランダの中等学校では日本の中学や高校のようなホームルームの教室はなく、生徒は大学のように、それぞれ自分の時間割にそって、各教科の授業を受けに行く。中等学校の後期課程(高校)では、40パーセント近くが、自分の選んだ専門コースの授業で占められる。自然科学・技術系ならば高度な数学や物理学を学ぶわけだ。

 こうした複線型の教育コースを、リヒテルズ直子さんは「フォーク型」と呼んでいた。これはヨーロッパに多い型で、戦前の日本もこれに近かったが、戦後はアメリカの6.3.3制の単線型に乗り換えている。

 ヨーロッパが複線型であるのは、社会編制が階級的であることを反映しているのだろう。農夫の子は農夫、職人の子は職人、医者の子は医者、学者の子は学者というわけである。こうした社会では、教育システムは必然的に複線型になる。

 これに対して、アメリカの採用する単線型では、高校を卒業するまで、生徒はほぼ同じことを学ぶ。そして高校を卒業した段階で、生徒達はそれぞれの進路に応じて大学に進学する。大学の後期課程に入り、ようやく専門的な教育を受けるわけだ。

 単線型と複線型のいずれがよいか。私の好みから言えば、単線型である。わずか12歳の段階で将来のコースを選ばせるのはどうであろうか。高校を卒業する18歳くらいまでは、もっと幅広い教養を学んだ方がいいように思うのである。

 もちろんこれには異論もあるだろう。日本の高校生の現状を見ていると、もっ早い段階で職業教育をしたほうが、学習のモチベーションが維持されるのではないかと思われることが多い。高校生全員に積分や微分を教えるよりも、タイルの貼り方や、材木の切り方を教えた方がよいという議論があってもよいだろう。

 リヒテルズ直子さんは、現代のオランダではこうした複線型の教育システムもかなり柔軟になってきているという。つまり、途中でのコース変更ができうるように配慮されていて、実力さえ伴えば、専門学校準備コースから大学準備コースへ移ることもそれほどむつかしくはないようだ。

 いずれにせよ、中等教育を終えて卒業資格を取得するには、「校内試験」(SE)だけではなく、「全国共通試験」(CE)も受験し、それぞれに10段階評定で6以上をマークしなければならない。そして、VWOやHAVOの生徒達は、卒業する年に約80時間かけて卒業研究をすることが義務づけられている。これも「校内試験」の重要な一部である。

 リヒテルズ直子さんによると、オランダの学生達は日本の学生達にまけないほどよく勉強し、忙しい毎日を送っているという。ただ、その内容は、日本の学生が駆り立てられている受験勉強とはまるで違っているようだ。

 今日のオランダの場合、複線型の教育システムも階級的というより、むしろ選択の幅を広げ、多様な生き方を実現するための、よりいっそう自由で合理的なシステムと考えた方がいいのかもしれない。リヒテルズ直子さんの「オランダはアメリカから多くを学びました。アメリカや日本も、オランダからもっと学んで欲しいものです」という言葉が印象的だった。 


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