橋本裕の日記
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2006年10月13日(金) 北朝鮮とアメリカの国際戦略

 10月9日(月)に北朝鮮が核実験を発表してから、世の中が大騒ぎをしています。日本政府も北朝鮮にたいする制裁措置を早々と講じました。安保理でも制裁決議が裁決されようとしています。新聞を読むと、「狂気の金正日」などという文字が踊っています。

 しかし、こうしたときこそ、腰を落ち着けて、もうすこし広い視野から事件の本質を冷静に捉えてみる必要があります。核実験をした北朝鮮は非難されて当然ですが、なぜ、この時期にこうしたことが強行されたのか、その行動の原因を考えるべきでしょう。

 北朝鮮を理解するには、戦前の日本を思い浮かべてみればよいと思います。戦前の日本は軍部が天皇を傀儡にして、威張っていました。そして、軍部が暴走して、15年戦争に突入しました。

 その直接の原因は、アメリカをはじめとする列強の経済封鎖でした。石油をとめられたら、もうおしまいだと思い詰めて、最後は海軍まで同調して、無謀な戦争に突入したのです。

 しかし、近代国家では軍部だけでは戦争はできません。戦争で利益を得ると考えた大多数の人々の支持が必要です。戦争で存在感をアピールし、出世のチャンスをものにできる職業軍人たちだけではなく、軍需景気を待ち望む財閥、そして戦争に勝てば景気がよくなると考える多くの国民の支持が必要です。

 現在の北朝鮮は近代国家とは言えないかもしれませんが、金正日だけでは戦争ができるわけはありません。私はむしろ現在の北朝鮮を実質支配しているのは軍部だと思っています。戦前・戦中の天皇がそうであったように、金正日総書記は軍部の傀儡だと考えてよいでしょう。もちろん軍部も完全に一枚岩ではありません。金正日も軍の一部に影響を持っていますが、その基盤はそれほど確固としたものではないようです。

 複数の消息筋の話では、金正日の義弟、張成沢(チャン・ソンテク)労働党中央委第1副部長が9月末に平壌市内で交通事故にあい重傷を負っています。張成沢は金正日や北朝鮮に改革解放政策を導入しようとしている金正日や、北朝鮮政治経済の中共政治経済への一体化を進める胡錦濤に近い人物だといわれていました。

 したがってこの事件は、「金正日や胡錦濤の反対勢力(北朝鮮軍部やそのバックにいる中共の人民解放軍や長老)が仕掛けた陰謀」か脅しだという説が有力です。

 どうようの事故が、金正日の身辺で続発しています。金正日自身が列車爆破事件であやうく暗殺されようとしています。これらは解放政策に反対する軍部保守派のしわざでしょう。「金正日の最大の敵は、ブッシュや国際世論ではなく、北朝鮮軍だ」といわれるゆえんです。今回の核実験も、軍部の「暴走」とみたほうがよいと思います。

 なお、アメリカはこうした北朝鮮の現状を正確に把握しているはずです。そしてその立場は、金正日を追いつめることです。つまり、北朝鮮の解放政策の邪魔をすることです。アメリカはこの意味で、実は、北朝鮮の保守的な軍部を応援しているわけです。構図からいくと次のようになります。

 �.▲瓮螢�−中共解放軍−北朝鮮軍部(軍部独裁)
 ��胡錦濤−金正日(改革解放)

 韓国の政権は�△鮖抻�してきました。また、小泉首相も�△力�線で走り出し、2度に渡る首脳会談までしたのですが、アメリカのブッシュに叱られてやむなく路線転換しました。阿倍政権は�,離▲瓮螢�主導のネオコン路線に追随することになるでしょう。

 アメリカや中共の保守勢力が改革解放路線を歓迎しないのは、北朝鮮を軍事独裁国家として存続させたいからです。これによって、アメリカはアジアにおける軍事プレゼンスを保つことができます。

 北朝鮮が軍事独裁国家としてアジアの一角に蟄居していてくれれば、在日米軍基地も存続できますし、武器輸出もできます。日本という世界第二位の経済大国を自由に支配できるのです。つまり、アメリカの世界覇権主義にとって北朝鮮はなかなかうまみのある「切り札」です。こうしたアメリカの世界戦略の罠におちているのが日本の政治家や国民なのだと思います。

 現在の北朝鮮では軍部が特権階級です。この特権を手放さないためには、なんとしても改革解放政策は阻止しなければならない。そのために軍事的緊張をつくりださなければならないのわけです。そして、これはアメリカの産軍複合体の利害にも一致しています。

 ゴールドマンサックス証券は10月11付けのレポートで、「核実験実施により、安部首相の改憲構想に追い風、防衛予算の拡大の恩恵を受ける」として三菱重工を買い推奨しているそうです。この問題の背景に北朝鮮の軍事独裁体制を温存させようというアメリカ産軍複合体の世界戦略があり、戦争をビジネスチャンスととらえる多国籍企業や投資家がいるとすれば、北朝鮮の行動に反発し、これを暴挙として非難し、ただ制裁を講じることだけでは北朝鮮問題は解決しないでしょう。


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