Land of Riches
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東武動物公園行くために半休取ったのに思うところあってやめたので、ぽっかり空いた午後を どう過ごすか考えた結果、柏市にオープンしたばかりの資さんうどんに行ってきました。 すかいらーく傘下に入り関東でも店舗増殖中ですが、もとは北九州のチェーン店です。
15分ほど店頭で待ち、カウンター席のタッチパネルでオーダーして更に10分ほど待ちました。 ごぼ天を3本添えたかしわうどんとミニぼた餅。資さんのうどんは博多のやわやわでもなく、 讃岐ほどコシがあるわけでもなく、言ってしまえば普通のうどんです。ゆえに全国展開可能とも 言えるわけですが…家の近所で並んでまで食べる物かと問われたら微妙な立ち位置です。 おでんと天ぷらでさくっと夜呑みできるぐらい客足が落ち着いたら、そっちで使えるかも。
帰宅後は先日も触れたTRIA PUNCTUM【わたしを刺す3冊の本】の2冊目を読了しました。 ジュリー・オオツカ『スイマーズ』ー水泳✕介護と私が生理的に嫌悪する話題の掛け合わせで、 自発的には決して選ばない1冊です。小説は一人称か三人称かなんて語られる時もありますが、 自由に混ぜ合わせる手法は独特で、表現としては唸りました。アメリカ産の英文学なので、 訳者の小竹由美子さんが日本語化に際してとても頑張ったとも言えるかもしれません。
思えばまたしても私小説です。繰り返されるなんてことない日常が少しずつ崩れていき、失われる 平穏な日々がどれほど輝いていたか結果的に思い知らされる展開が共通していると感じました。
スイマーズは5部構成で、まず1部が利用者達が地上の生活(それぞれの立場による波乱万丈が 日々起こる)から離れられる地下プールの閉鎖空間での穏やかなルーティーンを、若干排他的にも なりながら繰り返す姿が描かれます。2部ではそんなプールにヒビが入ったという共同幻想(?)に スイマー達が怯えたり慣れたりする経緯が執拗に描かれます。読者感想をwebで読むとこの2部が 割と賛否の「否」を集めがちパートのようでしたが、3部以降の前振りだと後で気付かされます。
ここまで群像劇でしたが、3部から一人のスイマーにスポットが集中します。1部でも利用者から よく名前の出ていた、やや受け答えが怪しい老女アリス。実は脳の萎縮がどんどん進んでおり、 3部では生活に支障をきたすレベルの認知症患者となった彼女が覚えている/覚えていないことが ひたすら列挙されます。最近の生活をほぼ覚えられないアリスですが、幼少期から子育てに至る 忘れがたき出来事は覚えていて、読者は列挙により彼女が太平洋戦争で収容所送りも経験した 日系二世で、初産の女児は奇形心臓ですぐ死亡し、亡骸を献体したのをずっと悔やんでいたり、 その後、娘と息子を得てそれなりの生活を送ることができたのを把握できます。
4部では自宅にメモを貼り付けまくっても生活できなくなったアリスが入居することになった 介護施設の、悪徳ではないがビジネス最優先の方針が延々と説明されます。Amazonレビューで どんな老人ホームの案内よりもこれを読んだ方がいいと書いた人さえいた容赦の無さです。 間違いなくこれも現実。3部〜5部のリアリティは作者の実体験が色濃く反映しています。 施設側としては「はい」しか言わない入居者は手もかからず楽でしょうから…。
ラスト5部は、そんな妻と離れて暮らしても愛は消えない夫と、母の初期認知症から逃げてしまい、 結果として娘としてきちんと認識されなくなり、強い悔いを抱いている『あなた』が描かれます。 この『あなた』が作者の投影です。1部からずっと変わらず丁寧に描写され続ける日常、 その尊さを読者も感じつつ、介護は必ず後悔を生むと読者レビューで書かれていましたが、 失われなければ素晴らしさや輝きに気付けないのか…という苦さも伝わってきました。
少し前まで私の帰省は年末年始のみでしたが、最近はGWと9月の連休も帰っています。 幸いにも現時点で両親は健在ですけど、一緒に過ごす時間は少しでも増やした方が良いかと思い。 先日の帰省中も、母は体調を崩して横になる時間長かったし、父はそんな状態でもコーヒーカップ 一つすら洗いもせず、家事は基本的に母にやらせていました。洗い物したり買い物に出たり、 私は手伝いましたけど…今更言って聞くような父ではありません。祖母の自宅介護を断念させるのも なかなか大変でした。介護も力仕事以外は母のタスクだったので…家族って難しいですね。
2025.9.27 wrote
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