くだらないことを書くノート 【HOME】【MAIL】
- [2003年06月18日(水)] そして僕は、目を閉じる。
朝と夜の毎日二回だけ、僕はそこを通る。
僕はそこを通り過ぎるときに、目を閉じる。
何も考えずに。
何も感じずに。
ただ、目を閉じる。
何の変哲もない地下道。
そういえばここに花が置かれなくなったのはいつからだろうか。
ふいにそんなことを考える。
そして首を振って、その考えを打ち払う。
それを知ってどうするというのだろうか。
そう、それを知ったところでどうなるわけでもない。
今日も僕はそこを通り過ぎるときに目を閉じる。
顔も、名前も、どうやって死んだのかさえ知らない誰かのために。
大丈夫。皆が君を忘れても、僕は、君を、忘れない。
なんという欺瞞なのだろう。
すこしだけ自分に対して嫌悪する。
何も知らないのに、忘れることなど出来るはずもない。
でも、
それでも、
多分僕は覚えているのだろう。
名前も知らない誰かを。
そして僕は、また目を閉じる。