自転車 ふらりと倒れた
買物袋から色んなものが散らばった ころがってく缶詰
「あら! まぁ…!」 しらないおばさんが駆けてきた
両ひじの荷物を揺らしながら 缶詰を追いかけるおばさん
あれも それも ぜんぶ拾うと 買物袋に詰めてくれた
度のつよい眼鏡 二重あご
「気をつけてね、 だいじょうぶ?」 心配そうに のぞきこんで
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夢で泳ぐように なにがなんだかわからないまま家に着いた
鍵をあけ 靴をぬぎ 買物袋を降ろしたら
部屋がぼやけて 見えなくなった
息が詰まるくらい しゃくりあげて
頭も 肩も 足も みんな
からだの形は消えて 温かい水と 小さな種に なった気がした
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