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■ omnibus
■愛すること。
「大事なのは、愛されているかどうかよ」 と、母は私に言ったけど、 私にはどうしても、愛せるかどうか それが一番大切なことに思えて だからきっと、私はいつだってちゃんと 誰かに愛されていたんだろうと思った。
あの人の紡いだ 麻薬のようなたくさんの言葉がみんな 想いの彼方に霞むくらいに あなたを愛させてよ。 あたしの心に その手で触れようとするのなら。
■遠幻。
あなたはなんでも知っていて あなたはなんでも教えてくれて あなたは何もかもお見通しで あなたはなんでもできる人で あなたはなんでも叶える人で すごく頑張り屋で なのにすごく怠け者で いつも自信過剰で なのにときどきちょっと弱くて すごく不真面目で なのにいつも優しくて あたしは結局一度も敵わなかった。 追いつくことさえできなかった。 あの日、あなたが言ったとおりに。
あんな奇跡はもう きっと二度と起こらない。
様々な痕跡が 今もあたしを苦しめる。 穏やかな日常に 降って沸いたような日々は あなたにわずかでも 跡を残しているだろうか。 なにもかも、もう 遠い幻のようでしかないけれど。
■ドミノ倒し。
あなたが好きだと言って教えてくれた あのアーティストが歌っていたよ。 その声にあたしは立ちすくんで、 そうして体じゅうを掬われて たったそれだけのことで全身が すっぽり悲しみをまとうのがわかった。
あんなに近くにいたのに。 あんなに覚悟していたのに。 あんな奇跡にはもう、 きっと二度と会えない。 だってあなたの代わりなんて、 あなた以外にいるわけないもの。
2003年10月07日(火)
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