にっきちゃん。

2001年11月16日(金) 今になって気付いたバカなあたし





この間、7月まで働いていた、わがいとしのT旅館の仲居さん、Kりんがやめるということで、
やめちゃうんだよ、って連絡をもらいました。
そしてわが親友、Kりんの送別会の日、
みんなが集まっている中で、これまたダイスキなわが愛しの先輩、Sさんが綾に電話をくれました。


「今ね、Kりんの送別会やってるんだよー」
って。
やめてしまった私は、送別会にもちろん行っていない訳なので。
そこで、Sさんが
「綾ちんだよー」
って言って、みんなに電話を回してくれたのです。


懐かしい、だいだいだいすきなみんなが、そこにはいました。
久しぶりに、味わったみんなの空気。

綾ちーーーん!元気?腰はどう?
綾ちゃん、元気にやってるかい、遊びにおいで。


すっごくすっごくうれしかった。
ダイスキなみんなの声がきけて。
みんなのあの雰囲気、なんにも変わってなかった。
女将さん、Sさん、Mさん、Hさん、Kりん、Sちん、Yちん、Kさん、Yさん、Aさん、
みんなみんな。
みんながチョットずつ喋って、ちょっとまってね、っていって
どんどんどんどん電話はまわっていく。

たくさんの仲間と思いっきり笑いながら話しました。
もう、楽しくて、嬉しくて、戻りたい!ってとても思いました。


・・・・・・電話を切った後、ちょっと、いや、ごめんなさい、かなり興奮してました。
それくらい、みんなと久しぶりに話せた事が嬉しかったんです。



そして。

私、ある事に気付いたのです。

自分でも、すごくすごくビックリしました。ショックでした。
みんなと喋って電話を切った後、誰の声が一番私の胸に残っていたと思いますか。



私は、みんなと話した事、とてもとても嬉しかったんだけど、
切った後、その人の事が心の中を駆け巡り、とてもとても大切だ、という気持ちが
溢れてしまって、どうしようもなかったんです。
そして、その人に一番一番、会いたい、会いたくってたまらなくなったんです。
一番懐かしかったんです。
一番もっと話していたかったんです。
そう、その人のこと、ダイスキだったんだ、って初めて気付いたのです。
久しぶりに声を聞いて・・・・・・



そう、それは。


私が一番嫌っていた、憎らしいとさえ思っていた、Aさんです。


あそこで私がまだ仕事をしていた時は、毎日のようにAさんに叱られ、罵倒され、馬鹿にされ、
時には無視もされ、睨まれ、
オマエはバカだ、オマエはダメ人間だ、オマエと私は違うんだ、って
何回も何回も・・・・・・。
何度も泣きました。
仕事に行くのがいやでイヤで、Aさんがいるのがイヤでイヤで
夜寝る前に毎日泣いていた頃もありました。
Aさんが私を殴らなかったのは、女だから、だけだったかもしれません。



なのに。


「綾ーーーだーれでしょーーー」
ってお酒が入ってハイになってるAさんに、
「あっ・・・・・・!Aさん!!!!!!!」
って思いっきり嬉しい声を上げてしまった自分にビックリしました。
「・・・・・・なんでわかるんだよ。綾ー、あのぽち、ってできたやつ、治ったか?お風呂ちゃんと入るんだぞー」
ってたのしそうにAさんは言います。
昔私がおしりにぽち、ってできて(笑うな。いや、笑え。)
みんなに相談して、みんなに笑われた事、そんなこと覚えてたんだ。

そしてAさんはマジメな声になって、ちょっとまってね、といい隣の人にかわりました。


本当に、それだけの短い会話だったのですが・・・・・・。



あそこをやめて、今別の場所から落ち着いてみる事の出きる私には、とてもわかります。
今だから。
あの時じゃないから・・・・・・。



思えば、みんながいっぱいいっぱいでほかの困ってる仲間を助けてたら自分がぼろぼろになる、っていう
戦争みたいな状況の中、
なにか失敗をしてしまってトラブルが起こってひとりでおろおろしている私のところに
一番にすっ飛んできて何も言わず相変わらずこわいカオして助けてくれたのは、
いつもAさんだった。

時間がなくてご飯が食べられなくておなかぺこぺこのままみんなと一緒に動いている私に気付くのはいつもAさんだった。

それで「ごはんいってきな」って無表情の冷たい顔で言うんだ。

私がお客さんからもらった手紙を流し台におきっぱなしにしてしまって手紙に水が染みていたのを見つけて
「お客さんが心を込めてくれたものを!!」
と、本気で私を怒ったのはAさんだけだった。


みんなが中途半端にやって帰った仕事を、点検して一人昼休みを潰して黙ってやりなおしているのは
いつもAさんだった。


そう、なにかあるたび、なにかするたび、本気で私を叱るのはいつもAさんだった。

そして、私が仲居さんになって1年が過ぎた時、
「1年、よくがんばったね」
ってまた冷めた表情で顔も見ず言ったのはAさんだった。





ああ。


あの時は、わからなかったことがこんなにあった。
もう、あの中にいない、今だから、よく見える。


いつだって本気で裏表なくぶつかってくれたのはAさんだけだったじゃないか。
そして、1年たったとき、ここまでよくがんばった、と言葉をかけてくれたのはAさんだけだったじゃないか。

私は、甘かったんだ、と今、思う。


Aさん、私は恥ずかしいです。


あんなに、みんなに綾とAさんは犬猿だね、といわれ、
Aさんが苦手だよ、なんてえらそうに言っていた私が、


あなたのこと、ダイスキだった、だなんて、恥ずかしくて誰にも言えません。


Aさん、バカな綾の面倒見てくれて、本当にありがとうございました。
なんといって、Aさんに感謝の気持ちを・・・・・・
この、胸にいっぱい湧き上がった気持ちを伝えたらいいのかわかりません。


だた、ひとつだけわかることは

そんなこといったって、Aさんはきっとまた
「あっそ」
といって、私を軽くあしらうんだろうな、ってことです。





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