この年末からお正月にかけて。 私たち旅館は暴風のように忙しかった。
毎日やらなければいけないことを1秒単位で走りながら消化していき 走って、走って、走っても時間が足りなかった。 ごはんを食べるという、概念もなかった。
強かろうが弱かろうがどっちでもいい、はっきり言って 苦しかった。 毎日逃げたかった。 誰かに泣きつきたかった。 泣きついてきた仲間を抱きしめたかった。 でも抱きしめてる時間がないから、 走りながら猛スピードで泣くならやめろ!と叫んだ。
チガウ、抱きしめて緩んで欲しくなかった。 緩んだ気持ちでいてもらっては仕事が回らないから。 そして正直、弱音を受けとめる余裕がなかった。 そんな自分を見ながらヤバイ、自分も限界にきてるんだ、と 危機を感じた。
本当は、苦しんでる仲間をいつも抱きしめられる自分でいたい。 毎日人より苦しくていい。 昔、毎日が苦しくてはぁはぁと息が切れて、心が切れて、 そんなときもっと苦しいはずなのにそばでおっきくにこにこ 笑いながら耐えてガンバッテル先輩の姿にどれだけ 励まされたか。「がんばれ!」とか、「つらかったら助けてあげる」なんかの 言葉じゃない。姿だった。 あのときの気持ち、忘れられない。 今思い出してもまったく褪せることなく蘇ってくる。
このお正月、そんな先輩のようなパワーを仲間にあげられる自分でいようという あたしは、限界を感じて自分に負けた。
もっと強い心を持っていたら。 どんなに苦しくてもまけない大きな心を持っていたら。 一秒単位で毎日走りぬける中、あたしは自分に負けて 部屋で一人よく泣いた。
もっと強くなりたい。 もっと、強い力が欲しい。
みんな、ごめん。 こんなあたしでごめんなさい。
絶対に強くなるから。
いつだって笑ってなんでも包み込める自分になるから。
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激しかったお正月を越して、また落ちついてみれば 何を語り合ったわけでもないのに みんなのことが前よりも涙が出るくらい愛しいと感じてる。 あんなに苦しかった毎日を同じように苦しみながら 笑顔で頑張りぬいたここの仲間が、 本当に本当にだいすきだ。
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