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12 後ろから抱きしめる 夜。 今日は、1階のサロンでは宴会か何かがあったはずだ。 どこかとの戦争に勝った、とか、そういう。 レイチェルが誘いにきてくれたけれども、断ってセドリックは自室で転がっていた。戦闘員ではない自分には、戦争がどうとかそういうことはよくわからないから。前の宴会のとき、うっかりハメをはずしてしまったから。 しかし、それは建前だった。よくわからなくても、みんなが楽しそうならそれでいい。参加しなかった本当の理由は、自分自身がわけもなくイライラしていてそんな気分ではなかったからだ。 コンコン。 ノックの音がする。 面倒でそのまま反応せずにいたら、もう一度聞こえた。 コンコン。 一体誰なのか。 こんな気分の時には、誰とも会いたくないのに。 コンコン。 3度目のノック。 仕方なく、セドリックは重い腰を上げて、ドアを開けた。 「はぁい♪気分はどう?」 「……。」 ドアの向こうには、楽しそうな雰囲気のレイチェルがいた。酒が入っているらしく、顔が上気している。暑いのか、上着を着ていなかった。肩の出た黒いスーツは、身体の線をいつもよりはっきりと浮かび上がらせていた。 「何しにきたの?」 イライラする。言葉がとげとげしくなるのを自分自身でも感じる。 だから会いたくなかったのに。心の奥から湧き上がるどす黒い凶暴な感情を、抑えきれない。 しかし、酔った彼女はそんな自分の状態には気づかなかったらしい。 「みんなあっちに集まってるしさ。広いとこのほうが、気分もよくなるかもしれないし、やっぱり来てみない?」 そういって、自分の腕を引こうとする。彼女を逆に引き寄せて、後ろ向きのまま強く抱きしめた。 「…今日は、行けない」 「セ、セドリックくん?」 さすがに少しおかしいと思ったらしいが、自分の身の危険なんてものは全く考えてないらしい。あぁ、なんてイライラするんだろう。このままめちゃくちゃにしてしまいたいと思うほどに。頭が痛い。これは警鐘、か。 抱いている腕の力を、無意識に強める。 あんなにも強いのに、こんなにもやわらかい。 首筋からいい匂いがする。このまま狂ってしまえそうなほどに。 「苦し…セ、ド…」 「今日は…だめ、僕がおかしい、から。」 ごめん。 そう言って、相手に反撃の隙を与えないまま、腕を放して少々乱暴に部屋の外に追い出し、そのまま扉を閉めてすぐに鍵をかけた。そうしなければ、自分が次に何をしでかすかわかったものではなかったから。 そのまま、ずるりと床に座り込む。 イライラは相変わらずおさまらないけれども、これで多分、大丈夫。 少なくとも、今は。 ドアの向こうで声がする。 ドアを叩く音がする。 耳を手で覆って、無理やり無視した。 今はこのドアを開けるわけにはいかないから。 自分の行動が相手を傷つけることはわかっていたけど、そうしなかったときにそれ以上に傷つくかもしれないことを考えたら、今はこうするしか自分には思いつかなかった。 お願い。だからそれ以上、ドアを叩かないで。 自分の中の獣が、完全に目覚めてしまわないように。 ***** ![]() お題は↑こちらよりお借りしました。 えーっと…セドレイです、よ? 当初の私の中のセドリックイメージとはだいぶ違います。かなりブラックというかダークなセドリックになりました。まぁセドリックにも色々ってことで(えっ?) 相変わらずまとまりのない文章でどうしたもんやら…読みにくくてごめんなさい。そして勝手設定でごめんなさい(汗)あの船、トップに酒好きが多そうなので、宴会してるイメージが…本編ではそんなもんしてませんでしたが、あってもいいかな〜とか…ははは…(隠)
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