海津ほろよい日記
湖畔の酒蔵 ほろよい社長の日常

2005年05月24日(火) 春陽米

吉田さん「春陽」というお米知ってますか。その米で造ったお酒のサンプルがあるので試飲してみます?

きのう訪問させていただいた彦根の酒屋さんでの出来事です。

そのお酒(滋賀県内の蔵元のお酒です)はワインのように酸味が強く、アルコール分13%とやや低め、精米歩合70%の純米酒というスペックからは想像できないくらい淡白な味わいでした。

この業界にはいって17年あまり、酒米についてはある程度知っているつもりしたが「春陽」という米は初めて、ネットで調べたら、なかなか面白いお米であることがわかりました。

このお米は、タンパク質の摂取を制限されている腎臓病患者のために、農林省系の研究所が開発した低タンパク質米なのだそうです。

お米に含まれるタンパク質には、「グルテリン」などに代表される易消化性タンパク質と、「プロラミン」に代表される難消化性タンパク質があるそうで、体内に取り込まれやすい易消化性タンパク質を、品種改良によって一般品種の約6割に減らした画期的なお米なのだそうです。

これまで、腎臓病の患者さんは「でんぷん米」といって、お米を半分以上に精米したり、酵素処理によってタンパク質を除去したものを食べておられたそうなのですが、高価で食味が悪く評判がよくありませんでした。「春陽」の開発はまさに福音といっていいでしょう。

さて、お酒をつくる場合、易消化性タンパク質「グルテリン」は、麹菌や酵母によって、旨み成分であるアミノ酸に分解されるのですが、「春陽」は低グルテリンですから、生成されるアミノ酸が少なく雑味の少ない淡白なお酒になります。

精米歩合70%の春陽で純米酒を造ったところアミノ酸度は0.7で、精米歩合40%の山田錦で造った大吟醸酒と同等のアミノ酸度になったそうです。

ほろよい個人としては、味わいのしっかりした酒が好きなのですが。こういう特殊なお米でいろんな可能性を模索するのもいいことだと思います。

「春陽」について詳しくは「中央農業総合研究センター 北陸研究センター」のHP(ココ)へ

詳しい報告はその中の(ココ)へ、後のほうに「越の誉」さんが試験醸造したデータも載っています。

せっかく農林水産省のキモ入りで開発された「春陽」なのですが、製品の表示問題で厚生労働省が待ったをかけ、生産者が困惑しています。興味のある方は(ココ)と(ココ/長文の議事概要の終盤のところ)へ。




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