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犠牲 ■2002年01月24日(木)■ 谷を渡す 細く長い一本橋があって 反対方向から彼は歩いてきた わたしはどうしても 早くそこを渡ってしまいたかった 橋の丁度真ん中で 二人は鉢合わせて 彼は彼の都合で譲れないと言った わたしは あたりに聞こえるような大声で 彼を詰りながら谷へ落ちると彼を脅し 彼はしょうことなしに折れて 一本橋にぶら下がることによって わたしに道を譲った わたしは 一生恩に着る、と礼を言いながら 谷のあちら側に渡ることに成功したが 谷底へ垂直にぶら下がる彼の手を わたしの靴が酷く踏みつけた事に気づくのは 橋を渡りきって振り返り 彼の姿がどこにも無いことに気づいてからである
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KATE ささやかでもない一日 ![]() マイエンピツに追加 |