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2004年01月22日(木) 笑顔の裏側。

 最近、意識的に読書をするようにしてます。
そんな訳で、今日の本 向田邦子 のエッセイ 「父の詫び状」

 向田邦子のエッセイや作品って、いたって平々凡々な、
古きよき日本の一般家庭の日常の風景から、好奇心旺盛で、
豊かな感性の筆者が捉えた、どこかユーモアに溢れた
見過ごしがちな小さな発見が面白さなんだと思うんですが、
今回、ちゃんと読み返してみたら、作品全体から感じる
明るい雰囲気とは裏腹に、暗く辛い体験が日常の影に
頻繁に見え隠れしていて、なんだか意外に思いました。

 もともと、向田邦子が生きた時代が、戦争という
死と隣り合わせの状況を体験し、その終焉によって
急速な復興と豊かさを獲得するという、まさに
「死と再生」そのものの時代だったというのも
一因なのでしょうが。


 お正月に特番ドラマで、山口智子主演で、「向田邦子の恋文」
を放送していましたが、あれも飄々として美人でありながら
カラッとした雰囲気、という、私の描いていた「向田邦子像」の
表層からは見えない、影の部分の話だったよなあ。

 
 陳腐な言い方ですが、明るさや楽しさは、その後ろに
背中合わせになっている、悲しみや寂しさや痛みがあればあるほど、
厚みと輝きが増すのだろうし、説得力も生まれてくる気がします。

 向田邦子の描く世界のユーモアは、痛みや苦しみを
十分知った上で、日々のなにげない日常に見出すことができる
楽しみであり幸せなのでしょう。

 そういった奥深さのある人間に、私もなりたいです。


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まめ。 [HOMEPAGE]