最近、意識的に読書をするようにしてます。 そんな訳で、今日の本 向田邦子 のエッセイ 「父の詫び状」
向田邦子のエッセイや作品って、いたって平々凡々な、 古きよき日本の一般家庭の日常の風景から、好奇心旺盛で、 豊かな感性の筆者が捉えた、どこかユーモアに溢れた 見過ごしがちな小さな発見が面白さなんだと思うんですが、 今回、ちゃんと読み返してみたら、作品全体から感じる 明るい雰囲気とは裏腹に、暗く辛い体験が日常の影に 頻繁に見え隠れしていて、なんだか意外に思いました。
もともと、向田邦子が生きた時代が、戦争という 死と隣り合わせの状況を体験し、その終焉によって 急速な復興と豊かさを獲得するという、まさに 「死と再生」そのものの時代だったというのも 一因なのでしょうが。
お正月に特番ドラマで、山口智子主演で、「向田邦子の恋文」 を放送していましたが、あれも飄々として美人でありながら カラッとした雰囲気、という、私の描いていた「向田邦子像」の 表層からは見えない、影の部分の話だったよなあ。
陳腐な言い方ですが、明るさや楽しさは、その後ろに 背中合わせになっている、悲しみや寂しさや痛みがあればあるほど、 厚みと輝きが増すのだろうし、説得力も生まれてくる気がします。
向田邦子の描く世界のユーモアは、痛みや苦しみを 十分知った上で、日々のなにげない日常に見出すことができる 楽しみであり幸せなのでしょう。
そういった奥深さのある人間に、私もなりたいです。
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