予備校の春季講習が始まって四日目。 二日目にしてすでにダウンした私は、 昨日、今日と予備校をさぼった。
昨日は、「行きたくない」とゴネて家族を困らせた。 お母さんに「しようがない子だね」と頭をこづかれたときは、 さすがに涙が出た。 高い講習費や画材費は、 お父さんが夜遅くまで働いて作ったお金だって、 ちゃんと知ってるのに。 講習でやることは、私の将来のためになるものだって、 ちゃんと分かってるのに。
そして今日は予備校に行くふりをして、一日中ぶらぶらと。
駅前の本屋で江国香織の「いくつもの週末」を買う。 そのすぐ隣のカフェで、オレンジジュースを頼んで、本を読む。 時々、外の雨模様やお店の他の客のことを見る。 それから、いつもと反対方向の山手線に乗る。 目的地は池袋。そこまで、一眠りすることに決める。 結局、山手線ニ周分ぐっすりと眠ってしまう。 池袋の画材屋で、絵溶き皿を四枚買う。 地元に戻って、時間合わせにマクドナルドに寄る。 バスで絵画教室へ向かい、版画の続きをする。 そしてまたバスで家へ帰る。
私が十時間くらい暇つぶしをしている間に、 ライバルたちはせっせとデッサンをしているはずだ。 私は後ろめたさ半分、新鮮さ半分で、今日を過ごした。 多分、立場的にはデッサンをすべきなんだろうけど、 こうやって過ごしたことも良いのかもなぁと、 ちょっとだけ思える。ほんのちょっとだけ。 買った本の内容は今日という日に似合っていたし、 カフェでオレンジジュースを飲んでいたおじいさんは 帽子と足を組んだ後ろ姿が格好良かったし。 ただ一つだけ、帰宅したときに、何も知らない母が 「おかえりなさい。雨なのに大荷物で大変だったわね」 と、私を気遣ってくれたことに対して、 本当に本当に胸が痛んだ。
ごめんね。
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