2001年10月25日(木)
不安ならば声を出せ

 紛失物。
 これは、あたしを凄惨な勢いで困らせるものの1つである。
 常に部屋が散らかっているので、
 必要なものがなくなってしまうと、パニックを通り越して
 明らかに不安になる。


 今回、失ったものは
 デジカメのACアダプタである。


 まぁね・・・・どうしても見つからない場合は
 お店に注文さえ出せば、新しいものが手に入る類の物なので
 然程、深刻な問題ではない。


 だけど。


 失せしもの・・・・
 それが戻ってこない、2度と手に入らないものだったりすると
 事態は最悪である。
 例えば、大事な人。
 普通に生活をしていれば、そういうことに遭遇するのは
 決して珍しい話ではない。
 失恋、死別、生き別れ・・・・エトセトラエトセトラ
 そういうものを乗り越えていくうちに、耐性みたいなものが出来てきて
 しっかりと自分の人生を歩むことができる・・・・正常な状態である。




 あたしは、どこかでその耐性の増長をストップさせてしまった帰来があるようだ。
 いつまで経っても慣れない。
 挙句、たかがデジカメのACアダプタがなくなってしまうだけで
 不安になってしまう。

 お金さえあればちゃんと手に入る。
 わかっている。
 バカバカしいと自分でも思う。
 疑念も抱く。
 「どうしてだ?」と。




 そうして、あたしはいつもの処へ帰り着く。







声を出す









 あたしにとっての大事なことのうちの1つ。
 それをくり返し、くり返し行うことで
 薬以外の力で以って
 不安と戦い、それを消し去る。



 芝居をやっているうちは良かった。
 厭でも毎日が稽古だ。
 出せなくなっても、出なくなっても、声は出さねばならない。
 でも、これは私にとってはとても効果的な不安対処法だったことを
 改めて知る。





 先日、面白い本を手に入れた。




「声に出して読みたい日本語」





 丁度、今日付けの中日新聞朝刊のコラムにも取り上げられていた。
 般若心経から、いろはがるた、古典の1部、能・狂言の科白、
 同人時代真っ盛りの作家達が書いた詩の一節、漢詩・・・・
 本当に色んなジャンルからの抜粋語録みたいなものだ。
 これを声に出して読めというのだ。


 あたしがいつも、作品に挑んだり
 例えば役作りをしたりする時に、1番大事にしていることは「音」。


 「みそひともじ」で披講をするときも
 何度となく「オノマトペ」という言葉を用いて
 言葉そのものが持っているリズムや音を楽しみましょう、みたいなことを
 くり返し主張してきた。



 この本は、名著です。
 誰もが1度は目にしたことのある言葉の羅列ですが、
 実際に声に出して読んでみると、目で見ているだけの時とは
 明らかに感覚が違います。



 あたしの場合、
 これはきっと体質なのでしょう、PMSの症状で
 生理の前になると口腔が腫れます。
 頬の内側や舌が腫れて、
 芝居の稽古をしている時などは、本当に困ったものです。
 サ行・タ行が言いにくくなり、短い科白でも噛みまくります。




 今日、不安回避のために声を出しました。
 その本をずっと音読していました。
 ずっと、トレーニングから遠ざかっていたのとPMSで
 あたしは、見慣れたはずの文章がすらすら読むことが出来ませんでした。
 そして、喉にも負担がかかりました。


 ですが、そんなポジティブなイライラのおかげで
 音読をしている間は、
 なくなったものに対する不安が薄れていたような気がします。










 これからも、あたしの周りにはどんどん物が増えてゆき、
 数多なる人々と出会うのと引き換えに、
 失せ物、そして親密な人との別れが待ち受けているだろう。



 そういう時に、声を出すということだけは
 忘れたくない・・・・。


 そう、強く強く思ったのでした。 
 

あさみ


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あなたの毎日にずぅむいん・・・・

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