”BLACK BEAUTY”な日々
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2006年07月15日(土) ロック経済学入門

「オメーにはわからんだろうが、これがホンモノのロックっていうもんなんだぜよ!」

オーバー30歳の方々、20歳の頃こんな価値観で音楽に触れていませんでしたか?

かくいう自分もついこないだまで、そう思っていた。実に20年という長きにわたって、そう信じていたわけだ。

この価値観とはつまるところ・・・
�� 自分こそが「真のロック」の理解者であり、体現者であるという、他者への圧倒的優越感
�� バンドをカッコイイと感じると同時に、そのバンドを好む自分のセンスをカッコイイと感じる自己陶酔
�� それ故、他のジャンルの音楽には猛烈な拒絶を示す。

しかしながら・・・
�� 優越感の相手である「他者」は決して「キー!クヤシー!」などとは絶対に思わない
�� バンドが全国規模に成長してしまうと、以前はあたかも自分一人だけの宝物であった「センス」を大衆と共有するすることになる。
従って自己陶酔できなくなる。
そして「あいつらは売れてからおかしくなった」といったおかしな事を言い出す
�� 「他のジャンル」のどこがどのようにダメなのか論理的に説明できない

ロックという音楽は基本的に「聴き手の優越感をくすぐり、自己陶酔を促進させる」という手法でビッグビジネスに成長してきた。60年代のアンドリューオールダム(ストーンズのマネージャー)然り、マルコムマクラーレン(ピストルズの仕掛け人)もまた然りである。

日本のロックビジネスも80年代はこの手法を採用し、成長してきた。
CD、チケットの販促広告やジャーナリズムも10代のキッズ達にそーっと耳打ちするかのように、
「とっておきの情報です。あなただけにお教えしますよ。実はこのバンド、みんなは気づいていませんが、ものすごーくカッコいいんです。だからみんなに知られる前にぜったいチェックしておいた方がいいですよ」
といった、証券会社の営業マン的手法でキッズ達の優越感をくすぐり、自己陶酔を促進させた。
何しろガラスの10代である。「他人と違っている事」こそ当時、10代の子供が欲しくて欲しくて堪らない最高のステイタスだったのだ。

ところが現実はというと、そのバンドのカッコ良さを知っている人はあちらこちらにウジャウジャしており、とっくに大衆性を獲得してしまっているのである。

なんて大人って汚いんでしょう。行儀よく真面目なんてできやしなく、夜の校舎窓ガラス壊して回りたいところですね。

因みに80年代を席巻した「BOØWY」は徹底した媒体戦略のもと、キッズ達の優越感をくすぐり、自己陶酔を促進させ、もしかしたら大衆性を獲得したのではないかとファン達が気づくその直前で解散した。
さすがはヒムロック。この人は多分ベンチャービジネスを立ち上げたとしても大成功を収めたろうと思う。

さて、90年代に入り、バブル崩壊と共に、バンドブームはあっという間に消え去った。
そんな中、あえて80年代的な手法で全国規模のバンドに成長したのがブランキーとミッシェルである。
ライブ会場限定販売のシングルをリリースしたり、新譜CDと共にジャケットや曲順の全く異なるアナログ盤をリリースしたり、あえてインディーズレーベルから新曲をリリースしたりと、実にファン心をくすぐる販売戦略を展開した。

ところが、この両バンドも解散を迎えた。

その後、日本の音楽シーンは楽曲主体にシフトし、「良い楽曲であれば売れる」という極めてシンプルな需給関係を生み出した。
逆にバンドのキャラも「隣のお兄ちゃん」的なもので足りてしまい、カリスマ性よりもトークの腕前が重要視されるようになった。

つまり「ペヤングソース焼きそば」のお湯を台所で流そうとしたら、手元が狂ってアチチチ!なんてなってる氷室京介は絶対に想像できないが、レミオロメンのボーカル君だったら全然アリなのである。

「えー、じゃあもうロックには夢も幻想もないのお?なんか寂しい。。私はもう夢見る少女じゃいられないの?」

とお嘆きの乙女へ。

実はその誕生以来、今この現在もファンの優越感をくすぐり、自己陶酔を促進させ続けているジャンルがある。

それはずばり「メタル」である。

メタルの凄い所は、時代や地域によって音楽性は異なるものの、メディア戦略をほとんど用いずに、音楽それ自体の力でファンに幻想を抱かせ続けている点である。この強靭な生命力があるからこそ伊藤政則は毎週深夜土曜日25:00-29:00というディープな時間帯にもかかわらず、昔と変わらぬ超ハイテンションでシャウトできるのである。

そしてメタルには強力な武器がある。「バンドTシャツ」である。
着用するだけで自らの好みを周囲に強烈にアピールすることができるシンプルかつ効果的なアイテム。これほどバンドTシャツに入れ込んでいるジャンルはメタルをおいて他にはない。

ウダウダと書いてきたが結局、俺が20年もかけて至った境地とは「ロックだろうがポップスだろうが演歌だろうが、この世には良い音楽と悪い音楽のどちらかしか存在しない」という簡単な答えだった。

ヒントはタイガーバンドだった。解散ライウも含めて、タイガーも含め、対バンした若いバンド達は皆、変に気負う事もなく、スカしているわけでなく、等身大でステージに上がり、ライブを楽しんでいた。彼等は前述の「80年代的なメディア手法」を経ていないため、バンドに関わる全ての事になんらの優越感も歪んだ自己陶酔もない。

よって、「これがいい!」と思ったらそれがどんなジャンルであっても自分達の音楽に何の抵抗もなく取り入れ、消化していく。

逆に「これがいい!」と思えても妙なプライドが邪魔して取り入れられなかったのが俺の世代。

この「風通しの良い」バンド環境の土壌を作ったのがハイスタであろう。

バンド名は忘れたが、若いバンドのボーカルの子のMC。

「みなさん楽しいですか?僕達も今日のライブを最後まで存分に楽しもうと思います。だからみんなも楽しんで下さい。モッシュするもよし、後ろでじっくり聴くのもよし、自分なりの楽しみ方で僕等の曲を聴いて下さい。ライブハウスは『誰もが自由』でなければならない場所だと僕等は考えています」

これを聴いて俺は大人気なく胸が「キュン」としてしまった。
そうだね、君の言う通りだよ。
逆に君の事羨ましく思うよ。
タイガーバンドに感謝しなくちゃね。

優越感と自己陶酔にはもーいい加減に飽きた。

ジャンル、スタイル、イメージ、コンセプトなど関係ない。

ただただ「良い音楽」を作り、お客さんと楽しもう。


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