今日から四月だ。 昨日までの雨はすっかりなくなり うららかな春の日であった。 休日だというのに、MILETが早起きした。 これは何かある、と思ったら案の定。 いそいそと出かける支度を始めたのである。 「TITANも行くんだよ」 そういうと、MILETは俺様の準備も 進めていく。 果たして、午前八時過ぎ。 俺様を伴ってMILETたちは車に乗り込んだ。 途中、コンビニに寄るとMILETが携帯の メールを打ち始める。 「JILLさん、忙しいかなぁ」 「大丈夫だろ。まだ」 「そうかな」 そう言えば、昨夜MILETがこう言っていた。 「JILLさんに会いに行くよ」 俺様を抱きかかえると更に、こう言った。 「TITANに会いたいんだって」 そうか。 今日はJILLに会いに行くのか。 JILLは修善寺のサイクルスポーツセンター とか言うところに、いるらしい。 修善寺と拙宅はクルマで2時間の距離である。 途中、渋滞もなくすんなり目的地に着いた。 さて。 着いてからが問題だった。 チケットを購入し、いざ入場しようとすると 「申し訳ありません。ペットの入場は…」 と、スーツ姿の男が言った。 ペット?誰がだ?よもや、俺様ではあるまい? 「お預かりします」 俺様の入ったキャリーを男は持つと、 事務室なるところへ連れ込んだ。 事務室に入る前に横目で確認したのだが… 哀れな犬たちが寒風に吹きさらしになっている。 おい。 俺様も、あそこに入れるのではないだろうな。 その心配はいらなかった。 充分暖房の効いた部屋で、俺様はしばし 「留守番」状態になった。 待つこと三十分。 MILETたちが帰ってきて、俺様を駐車場に 連れて行く。 その道すがら 「JILLさん、残念がってたよ」 「陛下に会いたかったって」 そうだろうな。 お前らは、所詮俺様の「付き添い」だ。 その付き添いが会ってどうするというのだ。 俺様をないがしろにした罪は、償って貰うぞ。 「可愛い人だったな」 MILETの相方が、鼻の下を伸ばしていた。 「そうだねぇ」 …ゆるさん。サイクルスポーツセンターめ。
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