春は瞬く間に過ぎて 既に初夏の気配だ。 陋屋付近にも、虫どもが 騒ぎ出す季節となった。 今日は部屋の中にまで入ってきた。 俺様はちょうど良い運動になると 虫を追いかける。 羽の生えている相手だ。 そう、易々と捕まらない。 それが楽しいのである。 自棄になって追い回していると、 家の中であることを忘れることもある。 壁に激突しそうになったり、 階段から転げ落ちそうになる。 無我夢中になると 仔猫時代を思い出すものだ。 俺様がこの家に来て はや四年である。 四年。 短かったような気もする。 四年前にも、俺様は夜中に虫を 追い回していた。 虫を追いかけながら 今日はそんなことを思い出した。
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