「観測系」
何かで一杯になる事は何もない事と似ている。基準点が曖昧なこの観測系は自分の立つ位置すら分からずましてや君を見失うなんて簡単だ。拒絶することでしか愛せない時があってその結果に気がつかなければいつの間にか私の側にはきっと君はいない。
「暁とマフラー」
目覚めたあなたの目に一番に入るのはきっとおかしな僕でそしてあなたは笑う。今日が昨日と違っているならば今日の僕も昨日と違っているはず。あなたが昨日のあなたと違っているならば僕が愛すあなたが少し大きくなるだけ。笑っちゃうくらいに空気が冷たくてあなたがマフラーを巻いて靴を鳴らし出すその瞬間その息が白いことに見とれていたい。
「望月」
暗がりに蜜。眠り際に夢。朔を撫でて満ちるあなた。愛しく月と同じに24通りの顔を持って僅かに笑う。私がはじめて使う言葉を投げかけた人があなたでよかったと思う。
「ふたり」
外は雪。僕らふたり。ものすごく遠くの方からあなたの声が聞こえていつしかひとり。いつしかふたり。
「恩に甘え」
恩を受けた人がいてその人達にはいつか恩返しをしたいと思う。恩を受けた人がいてその恩に僕が気づいていないかもしれないからなるべく人には優しくしようと思う。それができない時があるのはきっと僕に甘えがあるからだ。あの人の優しさに油断した。それは誰にだって見せるわけじゃないけどでも多分そんなのは言い訳にはならないんだろう。
「あの頃のように」
幼い頃、一緒に遊んだ近所のお兄ちゃんが好きだった。優しくて面白い人だった。いつも私を気遣いバカなこともやったけどなにか真ん中に芯が通っていてこの人は信用できると心で感じた。もう20年も会っていないけどもし偶然会うことがあったらまた昔のように僕の前を走って僕の知らないところへ連れて行って欲しい。きっと僕は置いてはいかれまいと必死に後ろを追いかけるのだ。