言葉は静かな武器だ



言葉は静かな武器だ...UGJoh

 

 

▲行く末▲

犠牲 ■2002年01月24日(木)■


谷を渡す 細く長い一本橋があって

反対方向から彼は歩いてきた

わたしはどうしても 早くそこを渡ってしまいたかった

橋の丁度真ん中で 二人は鉢合わせて

彼は彼の都合で譲れないと言った


わたしは あたりに聞こえるような大声で

彼を詰りながら谷へ落ちると彼を脅し

彼はしょうことなしに折れて

一本橋にぶら下がることによって わたしに道を譲った


わたしは 一生恩に着る、と礼を言いながら

谷のあちら側に渡ることに成功したが


谷底へ垂直にぶら下がる彼の手を

わたしの靴が酷く踏みつけた事に気づくのは

橋を渡りきって振り返り

彼の姿がどこにも無いことに気づいてからである










走りたくない ■2002年01月15日(火)■



ハードルを並べるのが わたしの仕事だった


「走れる?走れない?」と尋ねると


「走りたくない」が 彼の答えだった


意味のないハードルだけ そのままにして


わたしは 桜の木に結んだゴールテープを外した















ミゼラブル ■2002年01月13日(日)■


血走った目を皿のようにして

自分の身近にようやく見つけ出した

指先ほどのガラス玉を

小さな幸せだと感じて

心を温めようとしている女が嫌い

そういう女に限って

ダイヤモンドを見つけたときに

小さなガラス玉で 手がふさがっている



あるのか ないのかわからないような微かな温もりなら

わたしには要らないと言え



寒さに震えながら

鼻水を垂らして かっこ悪い自分を自覚しながら

厳寒の向かい風の中で 目を凝らそう










ピロートーク ■2002年01月11日(金)■




「貴方からあの手紙もらったときには愛を感じたなぁ」

「うまく騙されてくれたね」

「え?騙されてたんだ?」

「騙してないけどな」

「わかってる(笑)」

「わかってるんだ(笑)」

「そりゃ あの手紙だけには 愛を感じたよ」

「あの手紙だけが愛じゃなかったんだけどな」

「あら そうなの?」

「わからなかった?」

「わかってた(笑)」

「わかってたんだ(笑)」



なんだって いつだって

わかってて わからないふりをしていた














菓子パンの記憶 ■2002年01月09日(水)■

ふと 気まぐれに買った安い菓子パンを食べて

これは あなたがよく食べていたものだということを思い出す

あなたと一緒に食べたことはなかった

その頃のわたしにとったら

「いい大人がそんなもの食べて・・」というようなシロモノ

案外 美味しいものなのだと初めて知る



あふれ出す記憶



あんなに情熱的に愛されたことはない


あんなに優しくされたことはない


そして


あんなに酷い仕打ちを受けたことはない













ボーダーライン ■2002年01月07日(月)■


自分でも よくわからない

だけど確かに存在する

相手から投げられた言葉に反応して

今まで灯しつづけていたはずの炎が

ささいなことで消えてしまう瞬間


消える理由は簡単なんだ


=なんで あんたにそんな風に言われなくちゃならないの?=

=あほらしくて 演(や)ってられない=











日記の抱負 ■2002年01月03日(木)■


あなたが

忘れてしまいたいと思っていて

でも 捨てられないで

引き出しの一番奥に隠してしまった

古い古い日記帳を

盗み見しているような内容で


武器は静かに磨かれていく
















謹賀新年 ■2002年01月01日(火)■


どんな風に生きてきたら

日付が変わったくらいで

そんなにさわやかに

過去から新しい気持ちに切り替えられるんだ

みんな わたしが知らないうちに

デジタル思考になっているのか


あるいは


みんながみんな

苦い胸のうちをおくびにも出さないで

過去を清算してしまった風を装い

また新しく過去となるものを

気を取り直して 積み上げはじめているのか









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