最近俺様の背中辺りに、 違和感があった。 それをMILETは察知していたようだ。 勿論、俺様にも分かっていたが、 特に痛みがあるわけでもなく捨て置いていた。
しかし、今日のMILETは 鬼手仏心宜しく、その違和感を取り除くと 決めていたらしい。
夜のまったりとしたひととき、 俺様がうとうとしていた時である。 MILETがやおら俺様を抱き上げると、 陋屋で唯一「昼白色」の明かりがあるピアノの部屋へ 連れ込んだ。 そしてピアノの上に俺様を据えると、 その違和感の原因を探り出したのである。
なんのことはない。 毛が一束もつれていただけだった。 俺様の毛繕いが不完全であったのか、 それともMILETか薔薇職人が口にしていた何かが、 俺様の背中に落ちたのかは定かではない。 MILETは丁寧にその毛束をほぐすと、 今度はブラッシングを始めた。
毛繕いは俺様達猫族の楽しみの一つである。 それを奪うようなブラッシングという儀式を、 俺様はあまり好きではない。 しかし 今回は俺様のミスでもあるので、 イヤイヤながらも受けることにした。
それにしても、 アイスクリームだの、甘い飲み物だのを口にするなら、 こぼさないようにするか、 或いは俺様がどこにいるかを把握した上で、 賞味して貰いたいものである。
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