あの子が小さい頃 タンポポのことを 「たんぽこ」って言って
何度おしえても 「たんぽこ」で
それがなんだか可愛くて 母とわたしは クスクスクスクス笑ってしまった
ふいにそんなことを思い出して 読んでいた本をふせて クスクスクスクス笑う
姉ちゃんが冷蔵庫をあけた。 「ん?」
そしてふりむいた。 「あの」
「し、知らないよっ 姉ちゃんのチーズケーキなんて食べてないよっ」
はっ。
姉ちゃんははじめキョトンとして、 それから笑った。すごく笑った。 ぼくも笑った。 「いいよ、好きなんでしょ。 またいっぱい買ってくるし」 「うひ」
姉ちゃんがこういうので怒ったことって ほとんどない。
「ねぇあれ、場所取りしてんのかな」 「かもね」 「いいねぇ。…綺麗だねぇ」 「うん。そうね」
『桜はあまり好きじゃない』なんて ここでワザワザ言うことない わたしの指はさっきから シャツのとれかかったボタンを弄んでる
|