午後3時ころ、畑大治郎君から「近くに来ているからお邪魔します」との突然の電話。まもなく東京の有名地酒専門店のチーフマネージャーと2人でおいでになりました。
畑君の蔵は昔から「喜量能(きりょうよし)」というブランドでお酒を造っていたのですが、4年ほど前、東京の醸造試験所で3ヶ月の醸造講習を受けた後、いっそう積極的に酒造りの現場にかかわるようになりました。
酒ディスカウント店進出によるレギュラー酒の販売不振や、杜氏の交代などいろいろ御苦労があったようですが、2年前にリリースした新ブランド「大治郎」がブレイク、地元滋賀県はもとより首都圏でも新規の取引が始まり、人気が赤マル急上昇しているお蔵です。
醸造のスタンスもしっかりしており、地元での「山田錦」や「吟吹雪」の契約栽培は年々増加しており、現在は能登からおいでになる杜氏と2人3脚で仕込みをしておられますが、ゆくゆくはオーナー杜氏として充分やっていけるだけの技量を身につけつつあります。
せっかく酒販店さんとおいでになったのだからと、分析室にお通しし、今年の「花嵐」「雪花」の新酒や、熟成し火入れの純米酒や吟醸酒など何点かを利き酒していただきました。
チーフマネージャーさんは「それぞれの酒の酒質設計がしっかりしていて、差別化ができている」と好意的な評価。帰り際には、御両名から今夜京都で一杯いかがと誘われましたが、能登と大阪で連日大酒を呑んでいるので、それは勘弁していただきました。
大治郎君とは商売上のライバルになるのですが、やはり滋賀県で若手の醸造家が輩出してくるのは嬉しいものです。
1軒の蔵だけでは、県としての地酒イメージを高めることはできません。やる気のある蔵が何軒も集まり、相応の実績を作ってはじめて、その県の地酒のイメージが高められていくものです。
古くは新潟県にはじまり、静岡県、長野県、山形県など、みんなそうして銘醸県としての地位を揺るぎないものにしてきたのです。
6年の娘と2年の息子がかよう、マキノ東小学校PTA会長になりました。
児童数105人の小規模な学校なので、PTAのいろんな役が何年かおきにやってくるのですが、会長とはいかにも大役です。
自営業だから時間に融通がきくように見えますが、きっちり年休や勤務時間がきまっているサラリーマンに比べると仕事の時間があいまいで、休日は酒の小売がけっこう忙しく、PTA活動のある日は、妻や母に店番していただかねば仕方ないようです。
私が子供のころに比べると、PTAにも委員会なるものができ、廃品回収や春夏秋の校庭周辺の草刈、広報紙の発行、課外活動のサポートなどけっこう仕事があります。
また、週5日制が昨年より完全実施され、子供の休日の過ごし方が今、最大の問題となっています。
家にこもってテレビゲームをピコピコさせるよりは、できるだけ外に連れ出し、課外活動や郷土歴史教室、スポーツなどをさせるようにと、県や町、ボランティア団体、学校がそれぞれいろんな事業を計画するものだから、各事業の日程連絡調整会議なるものまでできる始末です。
昔は休みの日は、子供たちで勝手に路地やグランドで遊びまくっていて、大人になにかしてもらって遊んだという記憶があまりないように思います。
これも御時世なのでしょうか。
午前3時半起床。4時に珠洲市の「まつだ荘」を出発しました。 昨夜西尾杜氏と痛飲したため、若干二日酔気味。
早朝は車が少ないので、すいすいと走れ、8時に帰社しました。
1時間休憩のあと、町会議員選挙のため、在庫が5ケースになっていた金紋本醸造のビン詰めを昼までやり、午後は大阪リーガロイヤルホテルで行なわれる和魂洋才の会の配布資料を作成して、4時にJRで大阪へ出発しました。
この会はフランス料理と日本酒のマッチングの妙を楽しむことを目的にチーフソムリエの岡 昌治さんが10年前から毎月開いておられ、今回が第119回ということで、人気のほどがうかがえます。
私の蔵からは「雪花」と「花嵐」の新酒を持参し、もう一蔵招かれた、奈良天理市の増田酒造さんの「都姫(みやこひめ)」のアルカリ酒と大吟醸の4種類が本日のお酒です。
チーフソムリエの岡 昌治さんと、総料理長佐々木正秀さんが歓迎の挨拶をされたあと、純米大吟醸生「花嵐」で乾杯。前菜にはサザエのパイ皮包み焼きが出されました。
サザエ独特の濃厚な風味に、バターと塩、ガーリックの味わいが渾然一体となって口中一杯にひろがり、「花嵐」の華やかで爽やかな味わいが口中をすべりおちていきました。
メインディッシュには、フィレ肉のレアなステーキにワインビネガーのさわやかな酸味の利いたソースを加えたもの(これには3種類の天然塩が添えられていました)と、ポテトグラタンが出され(実はもう一品あったのですが、忘れてしまいました、申し訳ない)、これには純米吟醸生「雪花」を使っていただきました。
上品な甘味と酸が持ち味の「雪花」は、酸味の利いたステーキと、こってりとしたポテトグラタンの両方をしっかりと受け止め、参加していただいた皆様によろこんでいただきました。
今回はワインビネガーをつかった酸味のある味付けをほどこしたあっさりした料理が多く、これは日本酒を意識したものか、あとで客席をまわられた佐々木総料理長に聞いてみたのですが、「岡さんを困らせてやろうと思って」とニヤッと笑ってお答えになりました。
会の後、岡さんとお話していたら、「いつものアルコールのガツンとくる竹生嶋さんの味とはちょっと今回は趣が違いましたね」と正鵠を射た一言。さすがです。
実は今回は新酒ばかりで統一してみようと、意識的に熟成したタイプをもっていかなかったのです。もし、今度お呼びいただけることがあれば、熟成タイプの味わいの濃いものをもっていこうかと考えています。
2003年04月23日(水) |
能登杜氏自醸酒品評会 |
9時すぎ会社を出発、一路能登半島の先端、珠洲市をめざす。
敦賀インターで北陸道にのり、のと有料道路、広域農道(石川県は森前総理など有力国会議員がたくさんいっらしゃるので、来るたびに道が良くなります。金沢インターをおりてすぐのところにある石川県庁の新庁舎も豪奢なこと、さすが加賀100万石のお土地柄です)をへて、1時すぎ、内浦町の「能登杜氏自醸酒品評会」会場に到着。走行キロはちょうど300キロでした。
入場すると懐かしいお顔があちらこちらに。
酒造のシーズンを終え、品評会をむかえた杜氏の方々はみな一様に晴れ晴れとしておいででした。
蔵人さんを采配して何十年もお酒をつくっている年配の杜氏さんの面構えというのはなかなか味わい深いものです。
品評会は吟醸酒の部門と普通酒(といっても精米歩合65%から60%くらいの本醸造酒がほとんど)の2部門にわかれて審査があるのですが、わが蔵の西尾杜氏は普通酒の部門で僅差で入賞を逸し残念がっていました。
品評会終了後、珠洲市飯田の民宿「まつだ荘」にチェックイン、夜は西尾杜氏をお招きして残念会。両人ともお酒は好きなほうなので杯が進み、2人で1升ビンを1本空けてしまいました(あー明日は早朝の出発なのに)。
今日はマキノ町会議員の選挙がスタートする日
下馬評では、12人の定員に12人の立候補予定者がいて、波瀾がなければ無投票になりそう。しかしながら、あちらこちらで根拠のない噂がとびかい、もしかしたら選挙になるかもしれんとの話もあり、吉田酒造は和戦両様のかまえです。
立候補されている人には申し訳ないのですが、町とか村の選挙というのは、男のお祭りみたいな側面があり(大方はまじめに選挙活動をしているので誤解なきよう)、選挙になると血が騒ぐのか仕事そっちのけで事務所に陣取って采配をとるオジサンがけっこういるものです。
選挙違反取締りが比較的ゆるかった昔は、期間中は選挙事務所へいけばタダで酒が呑めるので、節操もなく毎日あちらこちらの事務所をハシゴする豪傑がいらっしゃいました。
こういうセンキョにつきものなのがやはり日本酒であります。ひと昔前なら、選挙年は製造計画からして、平年の1割から2割増し位多く見積もったものです。
今でも選挙戦になれば、1000本強、無投票でも500本程度の当選祝いのお酒が動きます。
というわけで、本日は、朝4時おきで金紋本醸造1.8リットルビンの包装作業(弊社では、この商品は包装紙で巻いて出荷します)でした。
9時から昼までは今年の新酒のビン詰め作業で1000本弱の純米吟醸をつめました(明日あさってですべてビン燗してしまいます)。
昼過ぎから、当選祝いの菰樽の配達と、鏡開きのだんどり(昔は選挙の応援にきた大工さんなどが手際よく準備し、私どもが手をかすことはあまりなかったのですが)。
お酒の受注も順調にいただき、最後の配達を終えたのが6時すぎ、おかげさまで金紋の在庫はほとんどなくなりました。 しかし困りました、金紋のビン詰めと純米吟醸のビン燗がバッティングしてしまいました。
明日は能登杜氏組合の自醸酒品評会があり、能登半島の先っちょ珠洲市に1泊の出張です。
朝から雨。桜もほとんど散ってしまいました。
桜サクラと騒いでいる間に季節はうつろい、見事な新緑があちらこちらに。
蔵元の湖岸にある樹齢200年以上といわれるケヤキの大木や、駅前通りのケヤキ並木、マキノピックランドのメタセコイア並木もそれぞれ芽吹きはじめて、見事な新緑につつまれようとしています。
雨にもかかわらず、本日も、ちらほらとお客様が御来店、 花見の最盛期に比べると接客に慌てなくてもよい時期なのですが・・・。
なんと10時すぎに静岡ナンバーの大型観光バスが、事前予告もなく吉田酒造前に横付け、40人ほどのお客様が、どかどかと来店されました。
昨晩お泊りになったホテルで「竹生嶋」をお召し上がり、いたくお気にいっていただき、お立ち寄りいただいたとのことです。
まことにありがたい話なのですが、弊社の店舗はさほど広くなく、10名位で満員になってしまいます。商品の御説明や、試飲しながら品定めしていただくためには、4、5人のお客様で手一杯なのです。
せめて、1時間位前にお電話でもいただけたら、蔵の方へ誘導させていただき、もう少し余裕のある対応ができたのですが。
店頭に出ている商品の量も少なく、母と私の対応で非常にお待たせいたしまことに申し訳なく思っております。
ハー、疲れた。 明日は、いよいよ山田錦のたねまき。来期に向けての酒造りがもうはじまります。
桜で明け、桜で暮れた一週間。 観光客のみなさんを相手の地酒の販売もまずまず順調でした。
おだやかな春の雨にうたれ、海津大崎の桜も次々と散りゆき、路には桜のじゅうたん。湖面は無数の花筏(はないかだ)。
去年サライの4月号?の表紙を飾ったのは大崎湖畔の花筏でした。プロっていうのは、観光地に出没する傍若無人なアマチュアカメラマンとちがい視点がちがいますな。
今日もあれやらこれやら、ラベルはり、小売の店番、個人向けの酒の発送で1日が終わりました。
夕方6時から「あけぼの会」に参加です。
なにやら右翼の秘密結社めいた名前ですが、何のことはない、蔵元の所属する自治会組織、海津3区第1組が運営する懇親会で、春のお花見と夏の焼肉パーティーが主要な事業です。力士の曙が横綱になったときに結成したので、この名前がつきました。
各家庭より最低1名は参加し、年寄りやら、働き盛りやら、若奥さんやら、高校生やら、小学生やら世代を問わずにあつまる会なので、隣近所のみなさんが今どうしておられるかがよくわかります(サラリーマンや学生は朝でかけ、夜帰ってくる毎日なので、なかなか近所の者には近況がわからないものです)
わいわいがやがやと、とりとめのない話をして、ビールと竹生島を痛飲して帰ってきました。
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