今日、大津の小売屋さんに生酒を納品したおり、その小売屋さんが主催される、「日本酒とナチュラルチーズとオーボエ演奏を楽しむ会」(7月26日、琵琶湖ホテル)についてお話をお聞きいたしました。
実はほろよいはチーズ大好き人間なのです(干支がネズミ年だからでしょう か)。カマンベールはもちろん、もっと臭いのでも過熟気味でもノープロブレムです(最近ちょっと血圧高めなので、塩分の高めのものは控えめにしていますが)。
鮒寿しの飯漬けで小さい頃から慣らしているので、ちっとやそっとの臭いでは動じません、ごはんにカマンベールをのせて熱いお湯をかけて食べる、カマンベール湯漬けなどもけっこう好きです(これを悪食というんでしょうな)。
ちなみに飯漬けの飯(いい)はとってもしょっぱすっぱく、ナチュラルチーズを彷彿とさせ、これだけで充分にお酒の肴になってしまいます。
小売屋さんとは、チーズの合いそうなお酒のことで相談をうけ、常温熟成10年古酒の「鬱金」や、酸が高めの純米酒のヌル燗なんかどうでしょうかと提案させていただきました。生酒よりは熟成してボディのしっかりしたお酒のほうが美味しいようにわたしは思います。
2003年06月09日(月) |
畦道ロードにほろよい専務(滋賀東びわこ農協編) |
滋賀県酒造好適米生産の総本山「JA東びわこ農協」へ見学に行ってきました。
東海道線JR川瀬駅前に東びわこ農協本店があります。
玉栄と吟吹雪のたんぼは、主に国道8号線東側より、名神高速道路にはさまれた(甲良町、豊郷町、秦荘町、愛知川町にまたがる)地域に広がっており、キヌヒカリやコシヒカリ、転作の麦畑(取り入れ直前)と混在しています。
本年の作付面積は、玉栄100町歩強で9.500俵の収穫。吟吹雪は20町歩強 で2.000俵の収穫を予定しておられるそうです(反収9俵程度がこれまでの実績だそうですが、個人的には少し取り過ぎかと思います。でも1俵あたりの農協買上単価が低迷しているから、できるだけ沢山とってという気持ちはわからないでもありません)。
去年最大の問題点であった、7月下旬の出穂(しゅっすい)から登熟期にか けての高温障害による胴割米(稲刈り前、あるいは収穫後の乾燥で玄米にヒビがはいること)の大量出現に対して、今年はどのように農協が指導されているかが、私の一番の関心事でした。
胴割れの最大の原因は、出穂(7月下旬)からお米が成熟していく登熟期にかけて、高温が続き、夜もあまり温度が下がらないため、稲の呼吸量が増大し、エネルギーを消耗、デンプンがこのために消費され、お米にまわらなくなるために、お米の組織がもろくなるからだそうです。この現象ははここ数年続いて起こっており、地球温暖化が遠因になっている可能性が高いと思われます。
こうしたお米は精米にかけると、すぐに砕けてしまい、1000キロの玄米を600キロとか500キロに磨きこむ高精米が非常に難しく、歩留まりが悪くなってしまいます。
一番の対策は、田植えの時期を1ヶ月ほど遅らせ、5月下旬くらいにもっていくことだと思うのですが(少し前の日記に書いたとおり、徳島とか兵庫では品種は違うとはいえ、6月になるまで田植えはしていません)、このあたりのお百姓さんは兼業農家が多く、高齢化がすすみ、平均の田んぼの面積が6反程度、苗はほとんど農協のものに頼っておられれます。息子さんが容易に休みがとれるゴールデンウイークに田植えをせざるを得ない事情があるそうです。
そのかわりに、肥培管理や水の管理などで胴割れをふせぐ方策をかんがえておられるそうですが、それで本当によいお米がとれるのでしょうか。他にも、単位面積あたりの株の多さや、一株の苗の本数の多さとか、不満な点はいくつかあるのですが、今年のところは、JA東びわこ農協さんのお手並みを拝見させていただこうと思います。
もし、今度のお米が今年と同じような結果になってしまった場合は、ユーザーとしてはっきりとした発言をさせていただくつもりです。こちらも、日本酒市場が低迷し、経営が難しい中で多額の資金を準備して、前払いでお米を仕入れているのです。中途半端なお米なら欲しくありません。
PS。胴割れの原因は、穂の先端から根の方に向かって成熟していくお米の登熟期に高温が続き、急激に登熟して過乾燥を起こし割れやすくなったり、稲刈り前にコンバインを入れやすくするために田んぼの水を落とす際、早く落とし過ぎて米が乾燥しすぎることも原因になるそうです。(6月11日追記)
子供たちが通学するマキノ東小学校の資源回収の日です。
8時からトラックで受け持ちのエリアをまわって、清酒1.8リットル瓶、ビール瓶、アルミ缶の回収です(前は新聞紙やダンボールなども回収していたのですが、古紙の市場が低迷しているので今はやってません)。清酒1.8リットル瓶の引き取り先はもちろん弊社です。
回収瓶というと、昔は、2.3年も軒下にほったらかしにしておいたようなカビカビのビンや、マムシ酒を造って飲んだ後の、マムシの死骸がぼろぼろになって残っているビン、大豆、米を貯蔵してびん底に大豆や米がへばりついているビン、タチの悪いのは、農薬や混合油、灯油がはいっていた瓶が時たまあって、社員たちを悩ませたものです。
今はリサイクルの考え方がそこそこ行き渡っていますので、あんまりエゲツない瓶は少なくなってきました(皆無ではないので洗浄後の検瓶はかかせません)。
大手のメーカーさんは、こういうタチの悪い不良瓶を恐れるあまり、もっぱら新瓶をお使いになられます。検瓶にもれて異物混入した製品を出荷し、PL訴訟や、保健所の立会い検査、マスコミにたたかれるリスクを負うよりは、コストは少しかかっても、なんの問題もない新瓶のほうがいいに決まっています。
大手さんが投入した新瓶が、結果的に回収瓶をつかっている中小メーカーにまわってくるわけで、これでうまく1.8リットル瓶の需給がうまくいっていたのです。
むしろ問題なのは、パック酒の飛躍的な増加です。すでに大手メーカーの出荷の半分以上がパック容器による出荷です。このため1.8リットル瓶の供給が少なくなり、中古1.8リットル瓶の需給がタイトになってきてます。
また、1.8リットル瓶を入れる6本のプラスチック箱(エンジ色のやつです)のレンタル会社も1.8リットル瓶での出荷が減ってきているため、レンタル料が減少してその経営が困難になりつつあります。
流通容器の変化は、従来の1.8リットル瓶リサイクルシステムを脅かしているのです。
追記)1.8リットルびんを洗って使う場合にも、大量の水を使い、洗浄後のアルカリ洗剤を酸で中和して下水にながさねばなりませんので、これはこれで結構な環境負荷がかかります。使い捨てのパックがよいのか、1.8リットル瓶を洗ってリサイクルしたほうがよいのかその点も考えねばなりません。リサイクルと一言でいいますが、現場にいると難しいものですね。
2003年06月07日(土) |
まんぷく道中御一行様御来店 |
「西近江路夢まんぷく道中」御一行様がおいでになりました。
これは高島郡の観光振興を目的に、京阪神の観光客を募集して、湖西の見所、味どころをツアーで巡るというお得なイベントです。
地元ボランティアが添乗員として四六時中お世話をやき、要所要所には、これまた歴史や染色、自然など専門の説明員がつき、各町役場の職員さんも出役するというまさに「上げ膳、据え膳」の御接待です。
弊社の蔵には、1時半頃、第1グループがおみえになり、順次4グループがおいでになりました(1グループだいたい15人前後で、滞在時間20〜30分程度)。
これくらいの人数と時間ですと、ざっとお酒の説明ができ、ゆっくりとお酒の試飲を楽しんでいただき、希望する方にはお酒の販売もあわてずにできます。
去年同じ企画で人数が多過ぎたため、充分な御接待ができなかった反省から、1グループの人数を減らしてもらうようお願いして正解でした。
2003年06月04日(水) |
畦道ロードにほろよい専務(徳島阿波町編) |
四国の地図がある方は開いてみてください。
徳島平野から四国山地の方へほぼ東西に走る大断層にそって流れるのが吉野川で、流域はなだらかな河岸段丘が形成されています。阿波町はその中流域に位置し、農産物生産が中心の町です。
この土地も非常に山田錦栽培の条件に恵まれており、土壌、日照、湿度、日較差など申し分ありません。平成の始め頃から山田錦栽培に着手され、徳島経済連米穀特産課と地元阿波町農協さんの熱心な栽培指導の結果、良質のものが次第に取れるようになり、当時、兵庫県産の山田錦を充分に確保できなかった全国各地の蔵元さんが買付けにお見えになるようになりました。今、作付け面積は150町歩を超え、一万俵強の収穫があります。
阿波町農協さんのすごいところは、ユーザーである蔵元の希望に沿うような米作りをされているところで、田植え、穂肥、稲刈りと3回の現地説明会をひらかれ、意見交換をされます。また冬季の仕込みの時期は、徳島山田錦を使っている蔵元をまわり製造見学においでになります。そして、その時に聞いた山田錦の評価は必ず生産現場にフィードバックさせ、次の年の生産計画に反映させます。
品質管理もきびしく「山田錦に向いていない田んぼにはつくらせない」「栽培が下手で、一定のレベルに達していない栽培者にも作らせない」という姿勢を一貫して貫いておられます。
そうした生産姿勢を評価して、阿波町山田錦を買う蔵元さんは、北は青森県から、山形、福島、埼玉、愛知、三重など全国各地に及び、当社も場末の造り酒屋ながら、本年も60俵(3.600kg)購入を予約しています。
この日は1時すぎに阿波町農協に集合、15蔵(地酒ファン垂涎の金看板蔵元さんも何軒かおいででした)ほどの蔵元さんと一緒に現地見学し、7畝ほどの田んぼに手植えで記念田植えをみんなでしてきました。
阿波町を出発したのが午後4時すぎ。帰社は9時を少しまわっていました。
◆ほろよい旅日記(おまけ)/ウダツあがるかあがらぬか◆ 奥様の実家がある、さぬき市(日本全国どこでも市町村合併はいいけど、もっといいピリッとした名前をつけてくれーい。これじゃあ最大公約数の無表情な名前じゃないか)寒川町で一泊したほろよいは、一路高松道を東進して徳島へ、途中、津田サービスエリアでモーニングコーヒーを一杯。
ぼんやりおみやげコーナーを徘徊していると、おおっとありました!讃岐の国限定「うどんキティ」携帯ストラーップ!。思わずお留守番の奥様のおみやげにゲット。これだけあちこちにあるのだから、地方出張するたびに探してホームページで公開しようかね。名づけて「地方限定キティちゃんをさがせ」略して「地キティをさがせ」。乞、御期待。
高松道全線開通のおかげ(なんと有力政治家のいる県は道路整備の速度がちがうねー)か、集合時間2時間前に阿波町に到着。時間調整のため、となりの脇町に立ち寄る。ここは「うだつのある町並み」を観光資源にして町おこしをしているそうな。
脇町は、昔、染色につかう藍(インディゴ・ブルー)の生産で財をなした商人が多く、立派な「うだつ」があがった町屋がならぶ町並みが保存され、特に藍商吉田家(ほろよいと同じ姓なのがニクイじゃないか)が一般公開されています。なかなか徳島県の片隅でこんなにりっぱな町並みを拝見させてもらえるとは思いませんでした。
ほろよいの蔵も、大手清酒メーカーの乱売合戦を耐え抜いて、地酒で「うだつ」があがるのでしょうか?
まだまだ勝負はつづきます。
2003年06月03日(火) |
畦道ロードにほろよい専務(兵庫中町編) |
午前9時すぎ会社を出発。京都東インターより名神高速、中国道をへて滝野社インターで下り、加古川沿いに北上、中町をめざします。
ここには、15年ほど続けて兵庫県産山田錦を買わせてもらっている、栽培農家、間嶋宏行さんがいらっしゃいます。中町は山田錦の親、山田穂発祥の地(もう一方の親は短稈渡船/たんかんわたりぶね)で、昔は繊維で大いに栄えた町だったそうですが、今は山田錦で町おこしをしておられます(なんとJAや役場の公用車は山田錦のマーク付き)。
山田錦といえば、中町のもう少し東にある吉川町や東条町の特A地域が有名ですが、間嶋さんの田んぼもその地域によく似た土壌で、地元の栽培農家が模範にするほど立派な山田錦を取られます。「作り手の顔の見えるお米」を使うことをモットーとする弊社としては願ってもない購入先なのです。
昼食をすませ、1時すぎに中町に到着、間嶋さんとの仲立ちをしてもらっている、地元の肥料店、吉田商事さんとともに自宅を訪問させていただきました。
中町の田んぼはまだほとんど田植え前。山田錦は7、8日からはじまり、14、15日くらいがピークだそうで、去年、出穂(しゅっすい)後の8月末から9月にかけて高温が続き、胴割れ米が多かったことへの反省から、できるだけ田植えを遅らせているとのことでした。
ここで話題になったのは良質の山田錦をとるための条件で、環境的要件はもちろんのこと、栽培する人の素養も大切で、特に田んぼの水のかけひき(1日に何回か水の様子を見て、水を入れたり、抜いたりすること)は良い山田錦をとるためには大変重要なことだそうです。山田錦も人を見ているそうで、水のかけひきをルーズにする農家は良質のものをとれないそうです。
環境要件の主なものを、順番にあげていきますと。 1)土 壌
2)日 照 日照時間が長いこと。品種名の通り山田錦は平野部ではなく、山間で栽培されるため、南北に走る谷よりは、東西に走る谷の方が理想的。(中国道沿いに栽培地がならんでいるのはこの理由もあります)
3)気 候 当然ながら稲刈りが終わる10月末くらいまで、霜の心配がないことが条件。これによりおのずと北限が決まってきます。
4)湿 度 湿度は低めで、風通しのよいほうが病気が出にくい(減農薬につながります)。
5)日較差 夜と昼の温度差が大きいほうが良い。山間で栽培されるのもこの理由によります。
2時間程度、3人で山田錦について情報を交換し、山田錦の苗をみせていただいて、そこで間島さんの記念写真。ことしも良い山田錦を期待しています。
4時すぎに中町を出発して、明日は徳島県阿波町の山田錦見学です。淡路島を縦断して、私の奥様の実家、香川県さぬき市寒川町でお泊りです。
◆ほろよい旅日記(おまけ)/6月淡路は、たまねぎロード◆ 淡路島は日本で有数のタマネギ産地って知ってました?本州四国連絡道で縦断中、車中にまで漂ってくる面妖な匂い。今、春タマネギの収穫で高速道路までタマネギの匂いがただよってくるのです。 そして、明石海峡大橋のたもとのサービスエリアには……、ありました! 淡路島限定「たまねぎキティちゃん」携帯ストラーップ。
この稼業、けっこう五感に頼るところがあります。
丸二日かけて麹をつくるときには、麹の温度はもちろんのこと、現在でも「甘香」とか「おはぐろ臭」とか「栗香」など、麹の育成にともない漂ってくる香りを目安にしています
お米を蒸したときも、その蒸し具合を「ひねり餅」をつくって米の芯が残っていないかチェックしますし、手を蒸米にいれて、蒸したお米のコワサを判断します。
もろみの状態を見るときも、櫂棒を入れて撹拌し、棒を通して伝わってくる感覚からサバケが良いとか悪いとか判断します。
この冬、あるお酒の会に参加したとき、若い看護婦さんと同席になり、そんな話をしていると、「患者さんをお世話しているとバイタル(体温とか、血圧とか体の状態をあらわす数値)が正常でも、なにか元気がないとか、おかしいなと感じることがある、若いお医者さんは数字だけ見て気のせいだというけど、往々にしてそんなときは患者さんの状態が急変することがある」そうです。
現場にいて、五感を働かせて仕事をしていると、第六感まで研ぎ澄まされてくるのだと思います。職人さんの勘というのは、空想的な、神がかり的なものではなく、現場を際限なく積み重ねることによって得られる現実主義の延長線上にあるものなのかもしれません。
本や、テレビや、インターネットなど間接的な情報では伝えきれないものが、現場にあることを、常に心しなければならないと思います。
間接的な情報で生半可にわかった気で入ると、手ひどい失敗をしてしまうことがありそうで、徹底した現場主義がお酒の世界には必要だと考えています。
明日より1泊2日の予定で、兵庫県中町と徳島県阿波町の山田錦を五感をはたらかせて見学してきます。その報告は日記にて。
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