2006年3月 ずっと身体に絡まり続けた縄は解け 足枷は外され 鍵を掛け続けた扉は開け放たれ 氷が融けて数年振りに本当の春が来た
季節の移り変わりは誰にも止めることは出来ず 春はやがて夏になり 秋になっていった
少し物悲しさの漂う季節と共に 春を連れて来た人は いとも簡単にあたしに秋を運び 冬を与えた
2006年冬のことだった
あたしはそれでも生きていた とても大切な瞬間 瞬間を ただただ暗闇の中 彷徨って もがいて過ごしていた日々に比べると 訪れた冬の寒さはまだマシで 入れ物だけになった心ででもなんとか生きていけていた
2007年3月 どんなに笑顔で過ごしてみても どんなに美味しい食事をしていても 真ん中のところで寒さに凍える毎日を過ごしていたあたしに ある日 新しい芽吹きの音が聞こえた
初めはとても小さな音で しっかり耳を澄まさなければ 聴き逃してしまうような音だったけれど そのうち音は大きくなって 丘の上の教会から聞こえる鐘の音のような やさしくてあたたかい希望に満ち溢れたものとなった
再び暗闇から救い出されたあたしは 今度こそ訪れた春を大切にして 噎せ返るような暑い夏にし 柔らかなオレンジ色の秋にし その冷たささえ愛しく感じられるような暖かな冬にして それを死ぬまで繰り返したいと思った
だけど 2008年3月 あたしの希望は また打ち砕かれようとしている
2年前 あたしにとっては存在価値さえないものになってしまっていた人だけれども 『一人の人』には変わりないその人を谷底へ突き落とした罰なのか
幸福を繰り返し続ける春を手に入れられない運命なのか
あたしの希望は 再び打ち砕かれようとしている
たぶん またあたしが春を運びたい あたしに春を運んでくれる そんな人は現れるのだろう
不思議だけれど 人の繋がりって なんだかんだで繰り返される
でもね でも そんなに簡単なことじゃないの
そんなに単純なことじゃないの
どこまでも落ちていく いつまでもいつまでも落ち続けていくその先に 居て欲しいのは あなた 受け止めて欲しいのは あなた
たったひとつの贅沢も神様は許してくれないのかな。。。
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